研究実績の概要 |
今年度はループス腎炎モデルであるMRL-lprマウスの更なる解析を行った。まずMRL-lprマウスのRAGE発現がどの細胞で増加しているかについて免疫蛍光染色を用いて解析したところ、糸球体においてメサンギウム細胞マーカーとRAGE発現は一致せず、ポドサイトおよび血管内皮細胞(CD34)とRAGE発現は一致していた。また、尿細管細胞において、興味深いことに週令が早い時期から遠位尿細管のRAGEが増加し、その後病勢が進行するにつれて近位尿細管でのRAGE発現が亢進することも判明した他、尿細管障害マーカーであるKidney injury molecule-1(KIM-1)の発現RAGEアプタマー投与群において著明に減少していた。さらに免疫細胞についても解析し、マクロファージにおいてRAGEアプタマーの活動性抑制効果が認められた。このPhenotypeの検証をSCIDマウスへCpGを投与するモデルを計画していたが、久留米大学医学部動物管理センターの新築移転に際しPathogen free roomの使用が困難であったため、その計画の変更を余儀なくされた。そのため指導医らと協議の末、RAGEノックアウトマウスを用いた薬剤誘導性ループスモデルでの検証を行う運びとなったが、RAGEノックアウトマウスに関しても動物舎の移転に伴い一旦胚と精子のみの保存を行う必要があり、予定よりも時間を費やす結果となった。最近よりpristaneを使ったループス腎炎モデルを随時作成中であるが、計画していた実験系を遂行することができず、残金を返金することとした。一方で、ループス腎炎における腎保護効果を示したRAGEアプタマーについて広報活動は継続し、Circulation journalにRAGEアプタマーに関する総説を投稿した[Circ J, 2020;84:2-8]。
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