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2017 年度 実施状況報告書

可溶性CD40リガンドを標的とした多発性硬化症の革新的治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K16109
研究機関千葉大学

研究代表者

枡田 大生  千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10722936)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード血液脳関門 / 多発性硬化症 / 可溶型CD40リガンド / 実験的アレルギー性脳脊髄炎
研究実績の概要

多発性硬化症(MS)は、脳、脊髄、視神経などの中枢神経系に脱髄病変が多発する疾患であり、再発寛解を繰り返しながら神経学的後遺症が蓄積していく原因不明の神経難病である。CD40リガンド(CD40L)はT細胞上に発現しており、レセプターであるCD40と結合して機能する。血液脳関門の構成因子であるアストロサイトや血管内皮細胞にもCD40は発現しているとされるが、近年、CD40Lの可溶型タンパクであるsCD40Lが血液脳関門の破綻に寄与することが報告された(PLoS One. 2012;7:e51793)。
我々はこれまでに、①MS患者において、血清および髄液中のsCD40Lが疾患対照より有意に上昇し、血清sCD40Lと血液脳関門破綻のマーカーである髄液/血清アルブミン比(Qalb)が正の相関を示すことから、sCD40LがMS患者において中枢神経系へのリンパ球の浸潤を促進していると予想されることを報告した(J Neuroimmunol 2017;305:102-107)。そのため、MSの動物モデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)を用いて実験を行い、以下の知見を得た。すなわち、②myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)で免疫したEAEの発症初期にsCD40Lを投与すると、濃度依存的にEAEが重症化すること、③発症初期のEAEにsCD40Lを投与すると、ピーク直前に血液脳関門が破綻する傾向にあること、さらに④血液脳関門のモデルである、血管内皮細胞を用いたナトリウム-フルオレセインの透過性実験において、sCD40Lが血管内皮細胞の透過性を亢進するという知見を得て、報告した(J Neuroimmunol. 2018;316:117-120. )。これらの知見より、sCD40Lは血液脳関門の破綻を通じてEAEを重症化させていると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初は2年間かけて行う予定であった内容を、1年間でほとんど行うことができたため、本課題に対する知見は現時点ですでに得られつつあるため。

今後の研究の推進方策

我々が集積した知見から、EAEにおいてsCD40Lを阻害することにより血液脳関門の破綻が改善され、EAEが軽症化することが予想される。実際、我々のEAEとは異なる系統であるSJLマウスを用いたEAEにおいて抗CD40L抗体がEAEを軽症化させることがすでに示されている(J Clin Invest 1999;103:281-90)。一方、MSにおいても血液脳関門の破綻を通じてT細胞やB細胞が中枢神経系に侵入することで病態を悪化させることが知られているが、上記①の結果より、MS患者血清中のsCD40Lが血液脳関門の破綻に寄与していることが予想される。これまで、ヒト抗CD40L抗体の臨床応用は血栓症の副作用が問題となり実用化に至らなかったが、近年、血栓症をきたさない新規薬剤が開発され、現在他疾患において臨床試験が進行中である(Arthritis Res Ther. 2015;17:234)ことから、臨床応用が期待できる。今後は治療の観点から研究を進めていきたい。

次年度使用額が生じた理由

当初マイクロスコープを購入する予定であったが、2018年4月から国際共同研究加速基金を用いた海外留学をすることになったため、解析に必要なPC購入を優先した。そのために次年度使用額が生じた。次年度は多発性硬化症(MS)の動物モデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)およびMS患者の剖検脳におけるsCD40L、CD40の局在解析を行う予定であるが、次年度使用額はその試薬代購入およびプレパラートを業者に送付して観察を依頼するために使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Soluble CD40 ligand disrupts the blood brain barrier and exacerbates inflammation in experimental autoimmune encephalomyelitis2018

    • 著者名/発表者名
      Masuda Hiroki、Mori Masahiro、Umehara Kenta、Furihata Tomomi、Uchida Tomohiko、Uzawa Akiyuki、Kuwabara Satoshi
    • 雑誌名

      Journal of Neuroimmunology

      巻: 316 ページ: 117~120

    • DOI

      10.1016/j.jneuroim.2018.01.001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Soluble CD40 ligand contributes to blood brain barrier breakdown and central nervous system inflammation in multiple sclerosis and neuromyelitis optica spectrum disorder2017

    • 著者名/発表者名
      Masuda Hiroki、Mori Masahiro、Uchida Tomohiko、Uzawa Akiyuki、Ohtani Ryohei、Kuwabara Satoshi
    • 雑誌名

      Journal of Neuroimmunology

      巻: 305 ページ: 102~107

    • DOI

      10.1016/j.jneuroim.2017.01.024

    • 査読あり
  • [学会発表] Soluble CD40 ligand contributes to blood–brain barrier breakdown and central nervous system inflammation2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Masuda, Masahiro Mori, Tomohiko Uchida, Akiyuki Uzawa, Ryohei Otani, Satoshi Kuwabara
    • 学会等名
      Sendai Conference 2017
  • [学会発表] Soluble CD40 ligand contributes to blood–brain barrier breakdown and central nervous system inflammation2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Masuda; Masahiro Mori; Tomohiko Uchida; Akiyuki Uzawa; Ryohei Ohtani; and Satoshi Kuwabara
    • 学会等名
      XXIII World Congress of Neurology
  • [学会発表] 可溶性CD40リガンドは血液脳関門破綻を介して中枢神経の炎症に寄与する2017

    • 著者名/発表者名
      枡田大生、森 雅裕、鵜沢顕之、内田智彦、大谷龍平、桑原 聡
    • 学会等名
      第29回日本神経免疫学会学術集会

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公開日: 2018-12-17  

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