研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は代表的な神経難病である。近年、ALSの患者は約半数に高次脳機能障害を合併し、前頭側頭葉変性症(FTLD)とは共通の病理基盤を持ち、連続した疾患スペクトラムと考えられている。本研究の目的は、これまでに名古屋大学神経内科で収集した多数のALS患者の高次脳機能検査、画像データ、縦断的臨床像とDNA検体を用いて、ALSおよびFTLD疾患関連遺伝子、認知症関連遺伝子の網羅的シーケンスを行い、(1)わが国のALS患者における既知のALSおよびFTLD関連遺伝子変異、認知症関連遺伝子変異の頻度を明らかにする、(2)孤発性ALSの高次脳機能障害に影響を与えている遺伝子変異の探索、同定を行い、孤発性ALSの病態関連遺伝子を明らかにすることである。孤発性ALS 713例の次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析データからTBK1遺伝子変異を1.26%にあたる9例に認めた。判明した遺伝子変異の部位をヨーロッパや他のアジア地域におけるALS患者で判明したTBK1遺伝子変異の部位や頻度と比較したところ、TBK1遺伝子変異の頻度は地域による差は認めなかったが、アジアではTBK1遺伝子のUKD領域の変異の頻度が多いことが判明した。また、ALS患者の遺伝子解析データから3例にVCP遺伝子変異を認めた。3例のうち、2例は既知の遺伝子変異であり、家族に封入体ミオパチーやFTLDの患者を認めた。残りの1例は行動異常を伴いALS-FTDと診断されており、VCP遺伝子に新規の病原性が疑われる遺伝子変異を認めた。これらの結果から、高次機能障害を伴うALSの遺伝的背景としてVCP遺伝子変異の重要性が示唆された。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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