多系統萎縮症(MSA)ではDSM-IVの基準に該当する認知症についてセカンドコンセンサスにおいて支持しない項目に入っている。しかしながらMSAでも高次脳機能障害を呈し認知症に相当する症例が少なくないことが最近の研究で明らかとなっている。一方MSAでは小脳病変は必発だが小脳病変に伴って遂行機能障害や視空間認知障害や言語障害などの高次脳機能障害を呈することが明らかとなっており、cerebellar cognitive affective syndromeとして注目されている。更にコンピューターの技術的進歩により頭部MRI研究の研究は日進月歩で進んでおり特に機能的MRIの解析ではデフォルトモードネットワーク、セイリアンスネットワーク、遂行機能ネットワーク、言語ネットワークでそれぞれ固有の小脳領域が分布していることが明らかとなっている。以前から我々はMSAにおける解剖学的ネットワーク解析を我々は行っていたが今回は機能的ネットワーク解析を使い、MSAにおける小脳関連ネットワークと高次脳機能障害との関係について検討した。その結果は独立成分分析解析で、MSA症例において健常者に比べ小脳に局在する左遂行機能ネットワークとセイリアンスネットワークが低下していた。更に左遂行機能ネットワーク内で低下していた右lobules VI / Crus Iに関心領域を設定した上でSeed based解析を行ったところ同部位と内側前頭前野・前帯状回皮質及び扁桃体と海馬傍回との結合の低下が高次脳機能の低下と関連することを示した。我々が報告した拡散MRIの結果と今回の機能的MRIの結果からMSAの高次脳機能の低下は、単一の解剖学的領域の病変では説明できず前頭前野/前方帯状回から同領域近傍に位置する脳梁、更に小脳と前頭前野および小脳と辺縁系の機能的結合の減弱が高次脳機能の低下が複数関連している可能性が示唆された。
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