研究課題
ヒト脳興奮抑制メカニズムの解明とてんかん治療への臨床応用を目指して、研究を推進した。術前評価のために頭蓋内電極を慢性留置した計3名のてんかん患者において、発作時脳波記録(gold standard)からてんかん焦点を同定し、同定された正常皮質(てんかん非焦点)・てんかん焦点に網羅的に単発電気刺激を行い、多数の電極で誘発電位(CCEP)と刺激誘発性高周波活動を計測した。頭部画像をもとに頭蓋内電極を各脳葉に分類し、正常皮質での脳葉ごとの外的刺激に対する反応性を比較・検討中である。CCEP、脳機能・解剖画像、脳機能マッピングでの評価結果より正常皮質を機能野と非機能野に分類し、生理的な刺激誘発性高周波活動の機能野・非機能野での差異を局所レベルおよびネットワークの観点からの解明を試みている。刺激誘発性高周波活動を正常皮質=生理的とてんかん焦点=病的で比較し、限局した部位での比較であるが、正常皮質よりてんかん焦点でより興奮性が高いことを解明した(国内学会発表、国際学術論文へ報告)。刺激誘発性高周波活動のてんかん焦点に関する感度・特異度の規定を試みている。網羅的な評価として、てんかん焦点の局在・病理所見との対比し、病変部位および病因別のてんかん焦点での興奮性を解析中である。また自発性高周波活動と刺激誘発性高周波活動の波形や分布の共通性・差異も検討中である。新たに、これまで不可能であった刺激部位(刺激電極)での刺激誘発性高周波活動の評価も開始した。
2: おおむね順調に進展している
研究項目(Ⅰ) 生理的な刺激誘発性高周波活動の計測:(1) 脳葉ごとの特性の解明として、術前評価のために頭蓋内電極を慢性留置するてんかん患者3名において、発作時脳波記録(gold standard)からてんかん焦点を同定し、同定された正常皮質(てんかん非焦点)・てんかん焦点に網羅的に単発電気刺激を行い、多数の電極で誘発電位(CCEP)と刺激誘発性高周波活動を計測した。頭部画像をもとに頭蓋内電極を各脳葉に分類し、正常皮質での脳葉ごとの外的刺激に対する反応性(生理的な刺激誘発性高周波活動)を比較し、脳葉間差異の解明を試みている。(2) 機能野・非機能野での差異解明として、CCEP、脳機能・解剖画像、脳機能マッピングでの評価結果より正常皮質を機能野と非機能野に分類を行った。研究項目(Ⅱ) 病的な刺激誘発性高周波活動の計測:(4) ヒトてんかん焦点における興奮性の解明として、てんかん焦点の局在(脳葉の違い)、病理所見と対比し、病変部位および病因別のてんかん焦点での興奮性を評価中である。刺激誘発性高周波活動を正常皮質=生理的とてんかん焦点=病的で比較し、限局した部位での比較であるが、正常皮質よりてんかん焦点でより興奮性が高いことを解明した(国際誌へ報告)。(5) てんかん焦点における自発性高周波活動との比較として、てんかん焦点において、各睡眠段階ごとに刺激誘発性高周波活動と、発作間欠期のてんかん性放電(棘波・鋭波)にみられる自発性高周波活動を計測し比較している。研究計画の上記2研究項目それぞれで、研究実績に具体的に示したように、研究計画にそって、症例蓄積およびデータ解析、学会発表を順次行っている。
引き続き、研究計画を推進する。研究項目(Ⅰ) 生理的な刺激誘発性高周波活動の計測:(1) 脳葉ごとの特性の解明として、新たに患者をリクルートし、網羅的に単発電気刺激を行い、てんかん焦点以外の正常皮質で計測する。(2) 機能野・非機能野での差異解明として、新たに検査を施行する患者でも同様に誘発電位CCEP、脳機能・解剖画像、脳機能刺激マッピングなどの手法で正常皮質を機能野と非機能野に分類し、機能野・非機能野での差異を評価する。また(3) 皮質興奮性の状態依存的変化の解明として、各睡眠段階(覚醒時、ノンレム睡眠時、レム睡眠時)ごとで刺激誘発性高周波活動を計測する。研究項目(Ⅱ) 病的な刺激誘発性高周波活動の計測:研究項目(I)と同様に、新たに患者をリクルートし、網羅的に単発電気刺激を行う。(4) ヒトてんかん焦点における興奮性の解明として、刺激誘発性高周波活動を正常皮質とてんかん焦点で比較し、正常皮質とてんかん焦点での興奮性の差異を解明し、刺激誘発性高周波活動がてんかん原性バイオマーカーとなるかを探索する。また(5) てんかん焦点における自発性高周波活動との比較として、てんかん焦点で、刺激誘発性および自発性の高周波活動の挙動を比較し、簡便で安全な新規てんかん焦点同定法の開発を目指す。得られた結果を取りまとめ、学会発表と学術論文への報告を順次行っていく。
今後さらに患者をリクルートして多数例の膨大なデータ解析を行っていく予定であり、高性能信号解析コンピュータ・データ管理用のデジタル脳波サーバーをはじめ、関連の設備備品費・消耗品の購入が必要なため。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (39件) (うち国際学会 12件、 招待講演 2件)
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