研究課題/領域番号 |
17K16123
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西辻 和親 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (40532768)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アミロイドーシス / アミロイド / ヘパラン硫酸 / グリコサミノグリカン |
研究実績の概要 |
アミロイドーシスは前駆体タンパク質が凝集することにより形成されるアミロイドと呼ばれる線維状の不溶性物質が、さまざまな組織や臓器に沈着する難治性の疾患である。全身性のアミロイドーシスの一種であるATTRアミロイドーシスは主に肝で産生される変異型あるいは野生型トランスサイレチン(TTR)をアミロイドの前駆体タンパク質とする疾患であり、その患者数は日本国内でも多く、長野県と熊本県に集積地が存在する。ヘパラン硫酸(HS)は種々の細胞が合成するグリコサミノグリカンの一種であり、全身に発現が認めらる直鎖状の細胞外糖鎖である。HSは硫酸化修飾を受けるが、硫酸化パターンや硫酸化度によりHS糖鎖内部でいくつかのドメインが形成される。本研究ではそのようなドメインの一つである多硫酸化ドメインに着目した。まず抗HS多硫酸化ドメイン抗体を用いてATTRアミロイドーシス患者組織を免疫組織化学的に検査し、HS多硫酸化ドメインがTTRアミロイド沈着物の構成成分であることを発見した。次に、全身性アミロイドーシス病態におけるHS多硫酸化ドメインの役割について、(1)タンパク質凝集、アミロイド形成に対する影響、および(2)アミロイド線維の細胞毒性に対する影響の二点から解析を行った。HS多硫酸化ドメインの構造アナログであるヘパリンは、TTRの線維化を促進すること、およびその促進効果はヘパリン内の多硫酸化ドメインを酵素的に分解することにより消失することが分かった。また、HS多硫酸化ドメインが通常細胞の3割程度に減少している細胞株に対するTTR線維の細胞毒性は通常細胞に対するものに有意に軽減されることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗HS多硫酸化ドメイン抗体を用いたATTRアミロイドーシス患者組織の免疫組織化学的解析、TTR線維形成に対するHS多硫酸化ドメインおよびHS多硫酸化ドメインの細胞外スルファターゼSulfによる酵素的改変の影響の解析、TTR線維-細胞間相互作用およびTTR線維の細胞毒性に対するHS多硫酸化ドメインおよびHS多硫酸化ドメインの細胞外スルファターゼSulfによる酵素的改変の影響の解析は予定通り行い、ほぼ完了した。研究代表者の任期満了と異動が重なったため、モデル動物を用いた実験からTTRアミロイドーシスにおける腎不全のメカニズムの解析に移行し、腎糸球体構成細胞の細胞株を準備し、その培養を順調に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ATTRアミロイドーシスに関連する遺伝子変異は多数報告されており、アミロイド沈着が見られる組織や臓器もさまざまであるため、引き続き患者組織の免疫組織化学的解析を行う。ATTRアミロイドーシスの大きな死因の一つは腎のアミロイド沈着による腎不全である。また、HSはコアタンパク質に結合したヘパラン硫酸プロテオグリカンの状態で存在し、その機能は少なくとも部分的にコアタンパク質に依存する。これらを踏まえ、ATTRアミロイドーシス患者腎で蓄積が確認されたHS多硫酸化ドメインのコアタンパク質の同定および腎不全発症機構について、免疫組織化学的手法および株化された腎糸球体構成細胞を用いて解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 生化学実験用試薬、免疫組織化学用試薬、抗体等の購入に際し、できる限りキャンペーンを利用するなどして節約に努めたため、当初予定金額より支出が抑えられた。 (使用計画) 前年度の結果を踏まえ、更に免疫組織化学的解析をヘパラン硫酸プロテオグリカンのコアタンパク質同定および腎不全発症機構解析に展開するため、それに必要な試薬の購入に充てる。また、腎構成細胞株化細胞およびそれらを用いた生化学実験用試薬の購入にも充てる予定である。次年度が最終年度であるため、成果発表のための学会参加費用および論文掲載料等も必要である。
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