研究課題
本研究では日本国内にも集積地が存在する難治性疾患であるトランスサイレチン(TTR)アミロイドーシス(ATTRアミロイドーシス)の発症や病態において、細胞外硫酸化糖鎖の一種であるヘパラン硫酸多硫酸化ドメイン(S-ドメイン)がどのような役割を果たしているかについて解析を行った。まず、ATTRアミロイドーシス患者の腎糸球体でヘパラン硫酸S-ドメインがTTRアミロイド沈着物に含まれていることを患者組織の免疫染色により見出した。さらにin vitroの実験系を用い、TTRの線維形成がヘパラン硫酸S-ドメインにより有意に促進されることを発見した。また、TTRアミロイド線維の細胞による取り込みや細胞毒性も細胞表面のヘパラン硫酸S-ドメインに依存的であった。ヘパラン硫酸はコアタンパク質と結合したプロテオグリカンの形態で生体内で存在する。本研究ではさらにコアタンパク質の探索も行った。その結果、近年糖尿病性腎症の危険因子として報告されているグリピカン5がATTRアミロイドーシス患者腎で蓄積していること、また、ヒトポドサイト細胞株やマウスメサンギウム細胞株を用いた実験を行い、TTRアミロイド線維によりメサンギウム細胞でグリピカン5の発現が上昇することを発見した。これより、ATTRアミロイドーシス患者腎で蓄積していたヘパラン硫酸S-ドメインのコアタンパク質の候補の一つであることが分かった。以上から、ヘパラン硫酸S-ドメインがATTRアミロイドーシスに新たな治療標的となり得ること、及びATTRアミロイドーシスで見られる腎不全にグリピカン5が関与し得ることが本研究により示唆された。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Biochim Biophys Acta Biomembrane
巻: 1861 ページ: 541-549
10.1016/j.bbamem.2018.12.010
American Journal of Pathology
巻: 189 ページ: 308-319
10.1016/j.ajpath.2018.09.015
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 5497
10.1038/s41598-018-23920-3
Glycoconjugate Journal
巻: 35 ページ: 387-396
10.1007/s10719-018-9833-8
巻: 8 ページ: 16173
10.1038/s41598-018-34571-9