研究実績の概要 |
我々は小児てんかん・発達障害を呈した患者より、T型VGCCであるCaV3.1をコードするCACNA1Gのde novo変異を4種類同定したが,そのうち病的意義があると考えられたものは3種であった.2種類は既に報告のある既知の変異であり,1種類は報告のない新規変異であった.野生型及び3種類の各変異型CACNA1GをHEK293細胞に発現させ,ホールセル法にてパッチクランプ法を行った.既知である2種類の変異については,既報告同様,I-V曲線及びactivation・inactivation curveのnegative shiftがみられ,刺激閾値の低下が示唆された.tau deactivation, inactivationのkineticsについても同様に,既報告の2種類は上昇がみられ,新規変異は野生型と変わらなかった. さらに我々はCav3.1のリソナンス特性についても実験を進めた.野生型のCav3.1を発現したHEKにおいては,入力した正弦波電圧に対し最も同期して増幅する周波数は2.13Hzであった.一方で既知変異を持つCav3.1を発現したHEKでは,1.0Hz,1.58Hzとより遅い周波数で同期していた.新規変異のCav3.1では2.24Hzと,野生型とほぼ同じ周波数であった.疾患原因となるCACNA1G変異Caチャネルにおけるリソナンス特性についての実験は報告がない.精神発達遅滞やてんかん原生にこれらの電気生理学的挙動の変化が寄与している可能性が考えられる. 臨床症状としては,既報告の変異を持つ2症例は,重度の精神発達遅滞があり,車椅子あるいは寝たきりのADLであるのに対し,新規変異を持つ症例は独歩が可能であった.臨床症状の程度と電気生理学的挙動変化の程度には相関がある可能性がある. これらの研究結果については現在論文化しており投稿準備中である.
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