研究実績の概要 |
脳梗塞、脳出血、脳血管性認知症の発症・病状悪化に、脳血管透過性の亢進が関与することが示唆されているが、脳血管透過性亢進メカニズムは、十分に解明されていない。我々はこれまで、血管透過性亢進機序の解明に取り組み、低酸素状態で血管内皮細胞のβ1インテグリン発現が減少すること、マイクログリアなどから分泌されたマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)やL-カテプシンが、脳血管基底膜の主要マトリックスであるコラーゲンIVを分解すること、β1インテグリンと基底膜マトリックスの結合が消失することで、血管内皮透過性亢進が誘導される機序を報告してきた。 当研究では2017年度内の成果として、①β1インテグリンを介したoutin signalが阻害されると、内皮細胞内でmyosin light chainキナーゼ、Rhoキナーゼが活性化すること、②Myosin light chainのリン酸化が亢進することにより、内皮細胞内のアクチンフィラメントの構造変化が起こること、③これにより内皮細胞間のタイトジャンクションが減少し、内皮間透過性が亢進することなどを明らかにしていた。 2018年度はこれらのin vitroでの研究成果をもとに、in vivo血管透過性亢進評価モデルマウスの作成を行った。血管内皮細胞がGFP標識されたTie2-GFP マウスを用い、中大脳動脈虚血再灌流あるいは中大脳動脈永久閉塞を行った。永久閉塞あるいは虚血再灌流後、二光子顕微鏡にて、頭窓法により虚血暴露領域を生存麻酔下で直接観察した。血管透過性亢進の評価は4kDa, 70kDa RITC dextran の血管外への拡散を観察して行った。結果、虚血後 3 時間程度から血管透過性が亢進する可能性が示され、同時間帯から血漿タンパクが血管外に漏出しうること、それが更なる脳実質障害の進展に寄与しうることを示す結果が得られた。
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