研究課題/領域番号 |
17K16138
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
稲葉 渉 弘前大学, 医学研究科, 助教 (00771578)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 2型糖尿病モデルGKラット / 膵β細胞減少 / 膵島細胞 / 膵島ホルモン |
研究実績の概要 |
【目的】2型糖尿病の病因の一つに膵β細胞の減少が知られているが、病期が進行しても膵β細胞は完全に消失しない。その背景には、新たに膵β細胞を供給・維持する機構(自己複製、非β細胞からの分化転換や膵島新生)などが想定されているが、その実態は未だ不明である。申請者は自然発症非肥満型2糖尿病モデルGoto-Kakizakiラット(以下GK)の膵臓を病理学的に検討してきた。その結果、高齢GKで膵α、β、PP細胞の減少に対しδ細胞の増加、そしてインスリンとソマトスタチンを同時に持つ膵内分泌細胞(ISD細胞)を見出した(未発表)。本研究では、GKおよびヒトにおけるISD細胞の出現の意義や発生とその機序を検討している。【方法】40週齢の雄性GKラット(GK)と対照のWistarラット(W)を用いた。インクレチン関連薬投与群にはDDPP-4I阻害薬(+DI)を投与した。実験期間中血糖を測定し、18週間後に摘出した膵臓のパラフィン包埋切片を用いて、膵島ホルモンとKi-67の5重免疫染色および、インスリン(In)とソマトスタチン(So)の蛍光2重免疫染色を行い検討した。【結果】随時と空腹時血糖はGKに比しGK+DIで有意に改善した(p<0.05)。GKの膵β細胞量はWの約 50%であったが、GK+DIではGKに比し約140%高値を示した(p<0.05)。この時、DIによる膵β細胞および他の内分泌細胞の増殖率は、0.1~0.2%と非常に低い値を示した。一方、GKにはInとSoの両陽性細胞がIn陽性細胞の約5%、So陽性細胞の約26%に見られ、GK+DIではその頻度が約1.5倍高値を示した(p<0.05)。DPP-4iにより中高齢期GKラットにおいてもβ細胞量の改善が見られた。その機序に、In/So両陽性細胞を増加させている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一部のGoto-Kakizaki(GK)ラットおよびWistarラットの飼育期間中の死亡例、また飼育室内の感染症事例が発生したために実験が制限され、実験に必要な週齢に達した個体数が維持できなかった。以上のことから、実験動物を用いた膵組織や単離膵島の評価が十分にできていない状態であった。 GFP標識ソマトスタチン/インスリンTgマウスについては個体の入手ができなかった。 In vitoroの実験では細胞株の入手および実験準備が完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
現在、実験に必要なGoto-KakizakiラットおよびWistarラットの各個体を飼育し、週齢に達した個体から順次、膵摘出及び膵島単離実験を行うこととする。 すでに飼育期間が終了した動物は、膵像標本を作製し、形態学的な評価を引き続き行う。 In Vitroの実験においても細胞株の入手が完了次第実験を行う。 また、ヒトの膵切片におけるインスリン-ソマトスタチンの両陽性細胞(ISD細胞)の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に実験ができなかった免疫組織学的検討に用いる抗体やIn vivoで用いる血糖計測用チップ、血清インスリンやグルカゴン測定用ELISAキット、In vitor実験に使用予定の培養細胞株および培地等の物品購入に使用する予定である。 また、論文投稿費用を使用額の一部とする予定である。
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