通常食を摂取したマウスでは、食後にinterleukin (IL)-10の門脈内濃度が上昇しており、このIL-10が肝臓での糖代謝に何らかの作用を持つことが考えられた。初代培養肝細胞においては、生理的濃度のインスリン単独では肝糖新生遺伝子が抑制されないが、IL-10との共刺激では抑制された。IL-10はマクロファージでLPSとインスリンの共刺激により短時間で強力に誘導された。TLR4の機能が低下したC3H/HeJマウスから骨髄移植後のマウスや骨髄特異的インスリン受容体ノックアウトマウスでは随時血糖が高値となり食後の糖新生遺伝子発現抑制が障害されたことから、骨髄系細胞へのLPSとインスリンのシグナルが食後血糖調節に重要と考えられた。さらに、私たちはPI3K-Akt経路の代謝調節での役割を検討するため、骨髄系細胞特異的Akt1/Akt2欠損マウスを用いた。このマウスのマクロファージではインスリン、LPSによるIL-10発現は減弱し、食後の糖新生遺伝子発現抑制が障害された。Aktにより抑制されmTORC1を抑制するTSC2がAkt1/Akt2と同時に骨髄系細胞特異的に欠損したマウスではmTORC1が活性化され、コントロールと同等の摂食反応が見られたことから、マクロファージのAkt-mTORC1シグナルが食後血糖調節に重要と考えられた。高脂肪食を摂取し肥満したマウスでは内臓脂肪組織マクロファージのIL-10発現が低下しており、食後の糖新生遺伝子発現が抑制されなかったが、アデノウイルスを用いてIL-10を強制発現すると食後血糖は低下し肝糖新生遺伝子発現は抑制された。これらの結果から、マクロファージが食後腸管由来のLPSとインスリンに反応しAkt-mTORC1依存的にIL-10を発現し、インスリンと協働して肝糖新生を抑制する経路が生理的な状態での食後糖代謝調節に重要と考えられた。
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