研究課題/領域番号 |
17K16144
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
盛重 純一 金沢大学, 医学系, 助教 (50423405)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スフィンゴシン1-リン酸 / 肥満 / 脂肪肝 / トリグリセリド |
研究実績の概要 |
本研究では,高脂肪食を負荷したスフィンゴシン1-リン酸(S1P)の2型受容体(S1P2)欠損マウスでは,野生型マウスと比べて体重の増加や脂肪肝の程度が低く,耐糖能異常も改善されているといったこれまでに得られた知見について解析を行っている. 本年度では,S1P2欠損マウスの肝臓に脂肪が蓄積しにくい現象について,初代培養肝細胞を用いて検討を行った.まず実験に先立ち,肝細胞での僅かな脂肪(トリグリセリド)の増減を定量化できるように蛍光試薬AdipoRedを用いた簡便で高感度なトリグリセリド定量法を開発した.この方法を用いて,遊離脂肪酸(パルミチン酸とオレイン酸の混合物)を取り込ませた初代培養肝細胞内のトリグリセリド量を定量すると,添加した脂肪酸濃度に依存して肝細胞内トリグリセリド量は増加し,1 mMパルミチン酸/オレイン酸混合物を添加した細胞において脂肪酸未添加の細胞と比べ3倍以上トリグリセリド量が増加した.このときS1P2特異的阻害剤(JTE-013)で初代培養肝細胞を処理するとトリグリセリド量は半分程度まで減少し,S1P/S1P2シグナルがトリグリセリド合成の制御に関わっていることが示された. また,野生型マウスとS1P2欠損マウスとで自発行動量を比較したところ,予備的ではあるがS1P2欠損マウスの方が高脂肪食負荷時の自発行動量が多いという興味深い結果を得ており,基礎的なエネルギー代謝の制御にもS1P/S1P2シグナルが関わっている可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスの飼育室の改装が行われ,設備上の問題でin vivo系の実験遂行に必要なS1P2欠損マウスの個体数を揃えることが困難であったため,in vitro系の実験を優先して行った.現在は充分な飼育スペースが確保できており,マウスの繁殖を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はS1P2が肝細胞のトリグリセリド合成に関与していることを検証したが,平成30年度は肝細胞とS1P2欠損マウスから調製した骨髄由来マクロファージとを共培養させて,マクロファージの仲介が肝細胞のトリグリセリド合成に及ぼす影響をS1P2の有無で比較検証する.また,脂肪細胞でも同様の実験を行い,脂肪細胞単独と脂肪細胞とマクロファージとが共存する条件下でトリグリセリド合成に及ぼす影響を野生型マウスとS1P2欠損マウスからそれぞれ調製した細胞を用いて比較検討する. また,平成29年度の研究で,S1P2欠損マウスでは自発行動量が野生型マウスよりも高いという予備的な結果を得ており,この結果の再現性を確認すると共に呼吸代謝量や熱産生量など他の基礎的なエネルギー代謝についても検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度に使用する研究費が生じたのは,本年度に引き続きin vivoおよびin vitro系での実験を継続するためひ必要な試薬を補充するため,そしてマウス(ノックアウトマウスを含む)を飼育維持するためである. (使用計画) 次年度の研究経費は,主に細胞培養,脂質定量,qPCR,ウェスタンブロットなどに使用する試薬や消耗品,マウスの維持費に充てる.また,情報収集や成果発表のための旅費も計上してある.なお,1品または1組若しくは1式の価格が50万円以上の物品の購入は予定していない.
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