研究課題/領域番号 |
17K16149
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
樋口 千草 岡山大学, 保健管理センター, 助教 (70794345)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | microRNA / メタボリックシンドローム / 2型糖尿病 / miR-342 |
研究実績の概要 |
C57BL6マウスを高脂肪高蔗糖食群と通常食群に分け、内臓脂肪組織、肝臓、血清からtotal RNAを精製し、small RNAライブラリーを作製し、RNAシークエンシングを用いて約800万リードの解析を行った。その結果miR-342は高脂肪高蔗糖食によって脂肪組織で9.4倍、肝臓で1.5倍とその発現が上昇することが判明した。mir-342のノックアウトマウスを作成することにより、肥満における代謝・脂質代謝・発癌に及ぼす影響を検討することとした。 UC Davis Mouse Biology ProgramのMMRRC (Mutant Mouse Regional Resorce Centers)よりSanger MirKO ES cell line Mir342を入手して9匹のキメラマウスを得た。さらにキメラマウスとC57BL/6マウスを交配させることによって、germ line transmissionを確認し、miR-342-/-を樹立した。平成29年度はこれらのマウスを高脂肪高蔗糖(HFHS)食で飼育し、体重、脂肪重量、糖負荷テスト、インスリン負荷テスト、脂質プロファイルなどを検討した。体重はmiR-342-/-、miR-342+/-ともにmiR-342+/+と比較し有意差をもって低下していた。インスリン負荷テストではmiR-342-/-、miR-342+/-ともにmiR-342+/+と比較してインスリン感受性の改善が認められた。さらに糖負荷テストでは、miR-342-/-、miR-342+/-ともにmiR-342+/+と比較して血糖値が低下していたが、インスリン濃度には有意差を認めなかった。すなわちHFHS食飼育下ではmiR-342-/-は野生型と比較して、体重の減少、脂肪組織重量の減少、糖代謝の改善を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
miR-342ノックアウトマウスにおける糖代謝の改善を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
miR-342のターゲット遺伝子の探索を行う。miR-342は12番染色体上に存在する。そのターゲット遺伝子群についてはmiRBase Sanger Intitute miRNA databasesなどのデータベースで検索可能であるが、想定されるターゲット遺伝子群は数多く存在するため、そのターゲットを検証する必要がある。一つのmiRNAは多くの遺伝子の発現をfine tuningしているという報告もあれば、一つのmiRNAがある単一の遺伝子発現を制御しているsingle miRNA-mRNA interactionの報告もある。miR-342-/-およびmiR-342+/+の通常餌飼育群、HFHS飼育群の計4群のmRNAの発現プロファイリング(DNAアレイ)を施行してターゲット遺伝子の確認を行う。3’UTRのシークエンスにmiR-342のシード配列が存在する遺伝子群のなかからmiR-342の欠損によって発現が上昇する遺伝子を同定する。そのターゲット遺伝子が同定された場合mir-342発現レンチウイルスベクター、LNA microRNA MimicあるいはAntagomirを用いて、マウス培養3T3L1脂肪細胞やマウス培養血管内皮細胞で過剰発現あるいはノックダウン実験を行いそのターゲット遺伝子を確認する。 さらにメタボリックシンドローム・糖尿病患者における血中miR-342濃度の検討を行う。メタボリックシンドローム患者、2型糖尿病患者、健診受診者の血清にCel-miR-39を外因性コントロールとしてスパイクインし、さらにmicroRNAをQIAamp Circulating Nucleic Acid Kit を用いて精製する。さらに定量PCR法によって(TapMan MicroRNA Assays)を用いて血清中のmiR-342を定量する。これによって肥満度、高血糖によってどのように血清中のmiR-342濃度が変化するのかを検討する。これらのデータは将来のRNA創薬の展開のなかで重要な基礎データとなる。
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