研究課題
Trk-fused gene (TFG) は小胞体からGolgi体へのCOPII小胞輸送に重要な役割を担うこと、またその遺伝子異常がいくつかの神経変性疾患の原因となることが近年明らかとなってきた蛋白である。TFG遺伝子異常によって生じる神経変性疾患の1つである遺伝性近位筋優位運動感覚ニューロパチー (HMSN-P) では糖尿病・脂質異常症の合併が多いことが知られている。我々はTFGの代謝制御機能に着目し、各臓器特異的TFG KOマウスを作製、その解析を進めている。膵β細胞特異的TFG KOマウス (βTFG KO) はインスリン分泌低下に伴いグルコース負荷試験にて顕著な血糖上昇を認めた。β細胞増殖低下によるβ細胞量の低下と単離膵島におけるグルコース応答性インスリン分泌の低下を認め、β細胞量・機能双方の障害により耐糖能障害を呈することを明らかにし、その背景としてインスリン顆粒内の結晶径の低下、小胞体ストレス、転写因子Nrf2の活性低下が示唆されることを報告した (Yamamotoya T, et al. Sci Rep. 2017; 7: 13026)。現在は後天的に成熟脂肪細胞特異的にTFGを欠失するタモキシフェン誘導性脂肪細胞特異的TFG KOマウス (AiTFG KO) を作製し、その解析を進めている。AiTFG KOは通常食負荷下でもインスリン抵抗性・耐糖能障害を呈する。その機序については現在解析中であるが、マイクロアレイ解析の結果からミトコンドリア機能への影響が示唆される結果を得ている。その他、筋肉特異的TFG KOマウス (MuTFG KO) についても運動能・代謝機能双方の面から解析を開始している。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は膵β細胞におけるTFGの役割について論文にまとめ国際誌に掲載することができた。現在は脂肪細胞におけるTFGの機能を中心に解析を進めており、マイクロアレイの結果からミトコンドリア機能への影響を示唆する、興味深い結果が得られている。
脂肪細胞におけるTFGの機能については、ミトコンドリア機能に着目し、古典的な白色脂肪細胞としての機能およびベージュ・褐色脂肪細胞における熱産生能の双方につき解析を進めていく。筋肉特異的TFG KOマウスについては通常食飼育下では顕著な表現型を認めていないが、高脂肪食負荷時の体重変化や運動能にも着目し、解析を続けたいと考えている。
マウス用トレッドミルの購入を検討していたが、他研究室より借りることができ不要となった。平成30年度に電子顕微鏡観察や各種ELISAで費用がかさむことが予想されるため、そちらに充填する予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
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