研究実績の概要 |
2型糖尿病治療薬であるメトホルミンは、心臓における小胞体ストレス抑制を介した臓器保護作用や抗腫瘍効果など、代謝領域以外においても注目されている。本研究の目的は、2型糖尿病治療薬であるメトホルミンの新たな膵β細胞保護機構、すなわち高脂肪食、高血糖及び小胞体ストレスといった膵β細胞の過負荷抑制効果を明らかにすることにある。高脂肪食を1週間負荷したマウスでは、インスリン抵抗性は惹起されないが、膵β細胞の代償性増殖を認めた。この条件下でメトホルミンを投与すると膵β細胞増殖が抑制された。また、マウス単離膵島において、メトホルミンは、グルコース誘導性の膵β細胞増殖を抑制した。高脂肪食および高血糖下において、メトホルミンは、AMPKリン酸化を亢進し、mTORシグナルを抑制し、過負荷を軽減している可能性が示唆された(Tajima K, et al. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2017)。また、一方で、インスリンシグナル非依存的な経路により膵β細胞増殖が惹起されるモデルを確立した (Tajima K, et al. Sci Rep. 2017)。インスリン受容体およびIGF-1受容体阻害薬であるOSI-906をマウスに1週間投与することで高血糖、全身のインスリン抵抗性が惹起され、膵β細胞増殖および細胞量の増大がみられる。このモデルマウスにメトホルミンを投与することにより、メトホルミンの膵β細胞保護作用をさらに追及していく。
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