研究課題/領域番号 |
17K16161
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 祐加 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00746729)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腫瘍性骨軟化症 / 骨芽細胞分化 / FGF23 / Klotho |
研究実績の概要 |
本研究は、Ca・リン代謝異常症における異所性石灰化の機序を明らかにすることを目的としている。本年度は、腫瘍性骨軟化症の原因腫瘍の組織を用いて、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化に関するシグナル伝達経路について検討を行った。腫瘍性骨軟化症の原因腫瘍の多くはphosphaturic mesenchymal tumor, mixed connective tissue variant (PMTMCT) と呼ばれる間葉系腫瘍である。リン調節ホルモンであるfibroblast growth factor 23 (FGF23)が腫瘍から過剰産生されることにより、患者は低リン血症性骨軟化症を呈する。FGF23は生理的には骨細胞あるいは骨芽細胞から分泌されるホルモンであり、PMTMCTからのFGF23産生の機序の一つに腫瘍内における間葉系幹細胞の骨芽細胞分化の関与が疑われる。耳下腺に発症したFGF23産生腫瘍と正常耳下腺の組織を用いて、RNAシークエンスを施行した。その結果、腫瘍組織において骨細胞、骨芽細胞、軟骨細胞に発現する遺伝子群の発現上昇を認めた。したがって、腫瘍性骨軟化症の腫瘍組織では、骨組織に類似した環境が形成されていると考えられた。さらに、発現上昇を認めた遺伝子のうち、一回膜貫通型蛋白であるKlothoに着目して検討を進めた。外科手術が施行されたTIO患者13例の腫瘍組織の免疫染色を施行し、8例にKlotho陽性細胞を認めた。腫瘍DNAを用いてKlotho遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化解析を行ったが、メチル化の程度と腫瘍のKlotho発現量に関連を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腫瘍組織の免疫染色やメチル化解析に予定していたよりも多くの時間を要したこと、TIOの腫瘍組織内に不均一性があるため、免疫染色とRT-PCRの結果が乖離することがあったこと、腫瘍組織と周辺の正常組織を比較できる症例が不足していたことなどにより、進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Klothoは腎臓、胎盤、小腸などに限定して発現するが、この組織特異性にDNAメチル化が関与している可能性が報告されている。一方、これまでの研究結果からは、TIOの原因腫瘍におけるKlothoの発現はDNAメチル化以外の要素によって調節されていると考えられた。近年、Klothoが骨細胞や骨芽細胞に発現することが報告されており、腫瘍性骨軟化症の原因腫瘍におけるKlotho発現は、腫瘍内の骨芽細胞分化の結果である可能性がある。腫瘍組織標本を用いた免疫染色や術前後の患者血清を用いた検討により、腫瘍内の骨芽細胞分化に関する転写因子やシグナル伝達経路に関する検討をすすめる予定である。
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