研究課題
本研究では、ヒトES/iPS細胞からの血管細胞分化誘導技術の改良、血管細胞分化誘導過程におけるBNPの機能的意義の検討を行った。我々の血管細胞誘導系は、血管内皮細胞(EC)と壁細胞(MC)の双方を簡便に誘導できることを特徴、利点として持つ。中~大血管でMCは血管平滑筋の形態をとるが、DNAマイクロアレイ法による遺伝子網羅的解析データベースを作成し検討した結果、我々の誘導したMCとヒト成熟血管平滑筋では異なる点が多く見られた。そこで、より成熟したMCを誘導するための技術改良に取り組み、TGFβ刺激の必要性を見出した。これにより、疾患特異的iPS細胞を用いた他施設共同研究で、これまでのEC誘導の解析だけでなく、今回、遺伝性脳動脈症(CADASIL)でMC誘導の解析を実施できた。また、StemFitを用いて未分化維持培養の継代状態を小細胞塊から単細胞に変更することで、血管細胞誘導も単細胞から開始可能となり、その後の解析や定量が容易となった。一方、血管細胞誘導過程において、特にFlk1(+)VE-cadherin(-)分画の細胞がBNPを強発現・産生していることの意義を追求した。この分画の細胞は、中胚葉系幹細胞、心筋幹細胞とは異なる遺伝子発現を示し既存の複数の誘導法にて心筋、脂肪、軟骨、骨への分化を認めなかったことより、血管幹細胞として機能し、血管細胞分化にBNPが深く関与することが示唆された。この細胞分画に対するsiRNA実験で、BNP発現を60%ほど低下させることに成功したが、誘導される血管細胞の性質に明らかな変化は認めなかった。今後は、未分化iPS細胞へのsiRNA実験、BNPノックダウンiPS細胞株の作成による解析も予定している。また、培養液へのBNP添加実験では、一定濃度のBNP添加によりMCの増殖率が増加したが、濃度依存性は明らかではなく、今後さらなる検討を要する。
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