研究課題/領域番号 |
17K16165
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
坂東 弘教 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (80790708)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 下垂体機能低下症 / 抗PIT-1抗体症候群 / 腫瘍随伴症候群 |
研究実績の概要 |
本研究は、自己免疫性内分泌疾患の発症メカニズムの解明と臨床応用を目指し、申請者らが同定した『抗PIT-1抗体症候群』病態解明の手法を基礎として、新たな症例を解析し診断・治療への臨床応用に展開するための研究基盤を確立することが目的である。 ①新規自己免疫性内分泌疾患の病態解析 今回複数の自己免疫性内分泌疾患と考えられる症例の解析を行い、特に腫瘍随伴症候群に伴い下垂体機能低下症を呈したと思われる症例の解析を進行することができた。腫瘍組織内に異所性抗原発現を免疫染色で認め、患者IgGが同抗原を認識し、ELISpotアッセイを用いて細胞障害性T細胞(CTL)が同抗原を認識することを証明した。この病態は新たな自己免疫性内分泌疾患の発症機構である。また、これまで継続してきた『抗PIT-1抗体症候群』についての解析を並行して行った。これまでCTLが下垂体のPIT-1陽性細胞を障害したことをELISpotアッセイを用いて示してきた。この事はPIT-1蛋白・フラグメントがMHC/HLA classI上に提示されていることを示唆する結果であったが、実際に細胞内でのプロセシングが行われ提示されているのかは不明であった。今回PIT-1陽性細胞であるGH3細胞を用い、免疫染色などを用いて、PIT-1蛋白がMHC class I上に存在することを同定し得た。 ②他領域IgG4関連疾患症例の下垂体炎合併頻度 今回は他IgG4関連疾患の代表として自己免疫性膵炎(AIP)を対象として下垂体機能低下・下垂体炎のスクリーニングを血液検査並びに下垂体MRIを用いて検討を行った。現時点で27例のAIP症例をスクリーニングを行った。今後もスクリーニングを行うとともに、AIP症例において下垂体機能低下を合併する予測因子となり得る因子の解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①新規自己免疫性内分泌疾患の病態解析 今回進行した腫瘍随伴症候群に伴う下垂体機能低下症症例については現時点で用いることのできるサンプルでの検討は順調に行うことができ、病態の大枠については解析し得た。抗PIT-1抗体症候群の解析についてはcell lineでの解析はほぼ終了しており、今後は下垂体組織での解析に移ることを検討する。 ②他領域IgG4関連疾患症例の下垂体炎合併頻度 当院でフォローされているAIP症例をほぼスクリーニングできており、今後は症例の詳細についての検討を行ってゆく。
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今後の研究の推進方策 |
①新規自己免疫性内分泌疾患の病態解析 腫瘍随伴症候群に伴う下垂体機能低下症については同様の機構が他の症例でも起きうるのか、occult腫瘍のスクリーニングを行うとともに、腫瘍の既往がある症例については腫瘍組織内の異所性抗原発現の有無について検討を開始することを検討中である。抗PIT-1抗体症候群の解析については、同症候群症例末梢血からiPS細胞を作成しており、今後同細胞から下垂体組織への分化を行うことでモデル作成の可能性について検討を行ってゆく。 ②他領域IgG4関連疾患症例の下垂体炎合併頻度 これまでにAIPでのスクリーニングを行い、下垂体機能低下を合併する予測因子となり得る因子について検討を行い、早期の学会発表・論文投稿を目標とする。また、特異的な指標が認められた場合には、AIP以外の他のIgG4関連疾患でも同様の傾向があるのか検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に試薬購入する目的で一部平成30年度分から前倒しが必要となった。この残金については平成30年度の使用額と合わせて試薬購入・英文校正などの目的で使用する予定である。
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