研究課題/領域番号 |
17K16168
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
永田 友貴 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (20779483)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 破骨細胞/骨芽細胞カップリング / 原発性副甲状腺機能亢進症 / 副甲状腺ホルモン |
研究実績の概要 |
副甲状腺ホルモン(PTH)は骨・腎臓に作用し、血中カルシウムの恒常性を維持している。また、骨芽・骨細胞においては副甲状腺ホルモン受容体に作用し、骨芽細胞分化や骨形成を促進する。活性化された骨芽・骨細胞はReceptor Activator of Nuclear Factor Kappa-B ligand (RANKL)発現が増加し、破骨細胞前駆細胞に発現する受容体のReceptor Activator of Nuclear Factor Kappa-B (RANK)と結合することで、破骨細胞形成および骨吸収を促進する。原発性副甲状腺機能亢進症では副甲状腺腺腫や癌、過形成等によりPTHが過剰に分泌され、骨代謝の亢進が認められる。 骨リモデリングは、前述の破骨細胞による骨吸収の後に、骨芽細胞によって新たな骨が再度形成されるという、破骨細胞/骨芽細胞カップリングの平衡状態が保持されている。近年様々な破骨細胞/骨芽細胞カップリング因子が発見されているが、病態モデルにおけるそれらの動態は未だ明らかではない。ephrinB2/EphB4は双方向性カップリング因子のひとつであり、それらを介し破骨細胞は骨芽細胞分化と石灰化を促進する一方、骨芽細胞は破骨細胞分化や骨吸収を抑制する。 本研究では、原発性副甲状腺機能亢進症における過剰なPTH によって、破骨細胞/骨芽細胞のephrinB2/EphB4 カップリング発現が変化し、その変化したephrinB2/EphB4によって、骨吸収・骨形成能がどのように調節されるかを研究課題とする。これらの現象や機序を検討することで、原発性副甲状腺機能亢進症に伴う骨粗鬆症のメカニズムの一旦やPTHによる破骨細胞/骨芽細胞カップリング因子調整を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)モデルマウスでは既報通り、高カルシウム血症および低リン血症を呈した。PHPTマウスの骨組織において、WTと比較して免疫組織学的検討で破骨細胞ephrinB2発現および骨芽細胞EphB4発現は増加を認めた。また上記マウスの骨検体で、マイクロCTによる骨構造解析を行った結果、PHPTマウスで海綿骨・皮質骨の有意な減少を認めた。in vitroにおいて、PHPTマウス由来の破骨細胞はWTマウス由来のものと比較し、ephrinB2発現の増加を確認した。WTマウス由来の骨髄単球より破骨細胞を発生させる過程でPTHを添加して培養したが、ephrinB2は増加しなかった。このことは破骨細胞にPTH受容体なく、PTHの直接作用はないことと一致する。WTマウスの破骨細胞/骨芽細胞共培養において、PTHの添加によってephrinB2は増加し、抗RANKL抗体によって低下した。これは骨芽細胞からのRANKL刺激によって破骨細胞を成熟し、ephrinB2が増加したと考えられた。また、初代培養の骨芽細胞はPTHおよびephrinB2-FcによってALP染色およびアリザリンレッド染色が増大し、同時添加によって相加的に増加した。このことはephrinB2/EphB4を介した破骨細胞から骨芽細胞への刺激とPTHが相加的に骨芽細胞分化および石灰化を促進することを意味している。 以上の検討において、過剰なPTH分泌によって活性化された骨芽細胞がRANKL発現を増加し、破骨細胞を分化させEphrinB2発現を増加することが示唆された。さらに破骨細胞EphrinB2はPTHと協調して骨芽細胞分化を促進させることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroにおいてはPTHによって活性化された骨芽細胞に発現増加するRANKLにより破骨細胞分化が促進され、ephrinB2発現が増加することが示された。これらのことをin vivoでも証明するため、WTマウスにPTHを単回投与もしくは持続投与し、時間依存的/容量依存的にephrinB2/EphB4が変化するか検討する。同時に血中の骨形成/骨吸収マーカーを測定し、骨代謝状態との関係を比較する。また、WTマウスにRANKLを24時間おきに腹腔内投与し、48時間で作製される高回転型骨粗鬆症モデルマウスにおいて、破骨細胞活性化による骨吸収亢進で、骨組織におけるephrinB2発現が増加するかをタンパク質での解析や免疫組織学的に検証する。反対に、WTマウスにマウス抗RANKL抗体を投与し、破骨細胞形成を低下させ骨吸収を阻害することで、骨組織におけるephrinB2が低下するかを同様の方法にて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行った細胞を使用したin vitro実験によって、PTHによる破骨細胞/骨芽細胞カップリング因子ephrinB2/EphB4の増加が認められた。これらの実験において、当研究室にある共通物品等を使用したため、次年度使用額が生じたと考えられた。この結果を元に、次年度はin vivo実験を複数予定している。他のPTH過剰モデルとして、PTH持続投与マウスを使用し、同様の現象が起きることを確認する。さらに、WTマウスにRANKLを24時間おきに腹腔内投与し、48時間で作製される高回転型骨粗鬆症モデルマウスを作成し、破骨細胞活性化による骨吸収亢進で、骨組織におけるephrinB2発現が増加するかをタンパク質での解析や免疫組織学的に検証する。反対に、WTマウスにマウス抗RANKL抗体を投与し、破骨細胞形成を低下させ骨吸収を阻害することで、骨組織におけるephrinB2が低下するかを同様の方法にて検討する。in vivo実験であるため、サイトカインおよび抗体を大量に消費するため、それらの購入資金とする予定としている。
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