これまでに申請者らは、恒常的活性化能をもつ新規ヒトエストロゲン受容体(ER)α変異体を多数発見した。これら変異体は恒常的活性化能とともにERアンタゴニスト耐性を有するため、ホルモン感受性腫瘍におけるホルモン非依存的増悪と薬剤耐性獲得に関与することが示唆される。しかし、それら腫瘍における発現・機能解析は未解決であり、本研究では分子生物学的手法を用いその解明を行うとともに、病態組織におけるERα変異体発現の定量系を確立し、ホルモン感受性腫瘍の発現プロファイルの同定を目的とする。本研究では、日本医科大学付属病院の手術で得られた下垂体腫瘍を用いて実施することとした。なお、手術前に、手術検体の一部を医学研究に用いる場合があることを文書・口頭にて原則全患者に説明しており、同意書は文書で取得している。また、本学倫理委員会に必要な手続きを取り、十分な法的、倫理規定に則った。 下垂体腫瘍の手術検体からtotal RNAを抽出し、逆転写反応を行いcDNAを合成しデジタルPCR法を用いて遺伝子発現量を定量した。平成29年度はまずその定量系の確立を行った。それに引き続き平成30年度は確立した定量系を用いて、複数の種類の下垂体腫瘍におけるERα野生型、ERα変異体などの遺伝子発現量を調べ、腫瘍の種類による発現量の差を比較した。平成31年度は特に非機能性下垂体腺腫(NFPA)にターゲットを絞り、ERα遺伝子定量し、免疫染色でタンパク発現を確認した。その結果、NFPAにおいてはERα発現が高い群と低い群を認めた。それに加え、ERα発現が高い群では、その下流遺伝子であるGREB1の発現量と有意に相関していることを見出した。本研究結果を英文論文にまとめ国際的学術誌に投稿し、現在査読中の段階である。
|