研究課題
エストロゲンは内分泌物質として脂質代謝の他に骨代謝にも深く関与しており,脂肪細胞や骨芽細胞からの食欲調節因子を介して視床下部に働きかけ,間接的に食欲を調節していると考えられる。一方,神経細胞で生合成されるエストロゲン(ニューロエストロゲン)が自己分泌・傍分泌物質として摂食中枢に働きかけるとも示唆されている。我々はニューロエストロゲン研究に特化したモデルマウスや解析技術を有している。そこで本申請研究では神経細胞株を用いたシグナル経路の解析,全身および神経特異的エストロゲン合成酵素過剰発現/欠損マウスの行動解析により,エストロゲンと摂食行動の分子基盤を明らかにする事を目的としてきた。本研究に使用したマウスは3種類ある。ArKO(アロマターゼ欠損マウス):卵巣および神経を含む全身でエストロゲンが合成できない。OVX(卵巣結紮マウス):卵巣からのエストロゲン供給のみを停止させたモデル。BrTG ArKO(脳特異的アロマターゼ発現マウス):神経細胞からニューロエストロゲンのみが生合成されるモデル。これら3種類のモデルマウスを作製し,食欲に対する影響を実験した(表1)。ArKOもOVXともに肥満になるが,食餌摂取量に関してArKOは増加、OVXは正常、運動量に関してArKOは減少、OVXは正常と違いがみられる。エストロゲンの低下は全身の脂質代謝異常を介して肥満を誘導する一方,食欲自体の制御にはニューロエストロゲンが深く関与していると考えられた。マウス由来神経細胞や各モデルマウスの脳組織を用いて分子生物学的な解析を行った結果,食欲調節分子であるMC4受容体の発現量がニューロエストロゲンによって大きく変化することを明らかにした。
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Biochemistry and Biophysics Reports
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