研究実績の概要 |
急性リンパ性白血病細胞株及び臨床検体を用いて、IKZF1, BTG1, CDKN2A, SLX4IP, TAL1, CD200/BTLA、ERGの変則V(D)J組み換えによる欠失変異を確認した。検出できたV(D)J欠失については、ダイレクトシークエンスにて、欠失部位の配列を確認し、V(D)J組み換えによる腫瘍特異的欠失が起きていることを確認した。最も欠失頻度が多いのはIKZF1であり、IKZF1欠失に注目して以後の検討を行った。急性リンパ性白血病においてIKZF1欠失は予後不良因子となることが報告され ているが、大規模コホートの次世代シークエンスあるいはMLPA法による検討が中心で、これまで日常臨床で検出可能な標準検査法が確立されていない。今回我々はIKZF1欠失の中で最も頻度の多いIKZF1Δ4-7について、デジタルPCRで定量的に変異アリル頻度を検出する方法を開発した。IKZF1欠失細胞株のゲノムDNAの段階希釈を用いて、RQ-PCR法との相関を検討した。デジタルPCRでは段階希釈による検量線を書く必要がなく、絶対定量が可能である。IKZF1欠失はゲノムDNAで検出 することができ、検体採取から半日ほどで結果を得ることができる。また、4種類のIKZF1欠失で共通欠失する部位を認識するFISHプローブを作成し、IKZF1遺伝子近傍のプローブと組み合わせることで、4種類全てのIKZF1欠失を検出できるFISHプローブを開発した。このFISHプローブを用いることでIKZF1欠失は多くの場合1アリルに起きるが、2アリルそれぞれで異なる種類のIKZF1欠失が起きる症例があることが明らかとなった。さらに、V(D)J組み替えにより切り取られたIKZF1欠失部位が、免疫グロブリン軽鎖遺伝子部位に挿入されている症例を見出した。
|