研究課題
2008年から2017年の10年間に当科で診療したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の症例で,R-CHOP療法を基本とした治療を施行し,医療記録から十分な臨床情報,病理所見を入手可能であるものを抽出したところ,102例の症例が抽出された.これらの症例の年齢中央値は60歳(範囲;25-84),男女比53:49で,49例が進行期,64例が節外病変を有していた.Hans’ criteriaで判断すると,GCBサブタイプは44例,non-GCBサブタイプは54例であった.初診時の血清LDHおよび可溶性IL-2受容体(sIL-2R)が上昇していたものは,それぞれ52例,71例であった.症例全体での5年全生存率は87.3%,無病悪生存率(PFS)は76.3%であった(観察期間中央値61.5ヶ月).初診時血清sIL-2R値で層別化すると(低値群→500 U/mL未満,中間群→500-2000 U/mL,高値群→2000 U/mL以上),低値群(n=27)では極めて良好な予後を示し(5年PFS 96.4%),これらの殆どはIPIでのlow-risk群であった.一方.高値群では不良な予後を示し(5年PFS 54.2%),この中にはIPI low riskも少なからず含まれた.さらに,GCBサブタイプでsIL-2R高値群に該当する7例のうち,4例で早期再発し,そのうち救援化学療法が奏効したのは1例のみであった.以上のことから,sIL-2R値はR-CHOP療法を基本とした治療を施行されたDLBCL症例における層別化予後因子として有用であり,特にGCBサブタイプでのsIL-2R高値はとくに不良な予後を予測しうるものと考えられた.
3: やや遅れている
CD47およびPD-L1の免疫染色を含めた臨床病理学的検討を行う予定であったが,MYC遺伝子の過剰発現を伴うDLBCL(MYC+DLBCL)は僅少であり,適格症例の抽出に難渋していた.
MYC+DLBCL症例のリンパ腫病理標本パラフィン切片を新たに切り出し,抗CD47抗体および抗PD-L1抗体による免疫染色を行い,発現の高低を評価する.同時に,抽出されたMYC+DLBCL症例の診断時の臨床検査所見,病期,治療経過,生存の有無など(以下,臨床データ)について調査,情報収集を行う.CD47およびPD-L1の高発現,低発現によって症例群を分類し,群間における臨床データの差異について解析を行い,CD47およびPD-L1の高発現が予後不良因子となりえるかどうかを確認する.CD47およびPD-L1の発現の差異と臨床データ差異の間に有意な相関が確認されたのち,前向き臨床試験を行う.すなわち,新規発症のMYC+DLBCLにおいて,病理検体のCD47およびPD-L1に対する免疫染色,そして臨床データの追跡を行い,先に確認された予後不良因子の実効性の検証を行う.CD47およびPD-L1が有意な予後不良因子として同定されない場合には,PD-L2やCTLA4といった他の免疫監視機構分子の発現についても同様の検索を行う.
物品納品の遅延によって生じたものである。平成30年度請求額と合わせて、物品の納品に必要な経費として使用する予定である
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