研究課題/領域番号 |
17K16179
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
池田 翔 秋田大学, 医学部, 医員 (20791495)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / HDAC阻害薬 / microRNA |
研究実績の概要 |
我々の研究グループではmicroRNAの機能解析による造血器腫瘍の分子病態解明と新規治療戦略の検討を行ってきました。今回の研究では、多発性骨髄腫の新規治療薬であるHDAC阻害剤パノビノスタットの抗骨髄腫効果(標的遺伝子)解明と感受性患者の層別化を目指してデータをとっています。細胞株(n=2)を用いた網羅的microRNA発現解析の検討では、パノビノスタット、ボリノスタットの2つのpan-HDAC阻害薬によって、共通して変動するmiRNAとして6つの上昇miRNAと抑制miRNAを特定しました。 このなかでまず、上昇するmiRとしてmiR-188に着目しました。このmiRNAは正常形質細胞に比べ骨髄腫細胞で低下していることが以前報告されています。我々の患者検体(n=4)の検討でも、miR-188は非常に抑制を受けていることがわかりました。miR-188の標的mRNAについては、in cilicoの検討ではIL-6レセプターサブユニットがトップに予測されました。実際に細胞株(n=6)にmiR-188を導入すると、細胞株によって違いはあるものの、IL-6Rの発現が低下することが分かりました(フローサイトメトリー、qRT-PCR)。今後、患者検体で同様の機能解析を行い、in vivoでmiR-188の腫瘍抑制効果を検討する予定です。 一方、HDAC阻害薬により抑制されるmiRNAとして、miR-210がもっとも変動するmiRNAとして注目されます。miR-210は強くHIF-1の制御を受けることが知られており、我々もこれを確かめていますが、今後HDACがHIFを抑制するかどうかを検討したいと考えています。HIF阻害薬は骨髄腫においてまだ成功していませんが、HIF高発現患者に対するHDAC阻害薬の効果が高いかどうかを確かめ、そうであれば新規層別化の手掛かりになると考えられます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞株での検討を中心に標的miRNAの機能解析を行いましたが、貴重な患者検体を用いた詳細な検討はまだできておりません。検体収集はできていますので、今後HDAC阻害薬を患者検体に用いて検討したいと思います。ただし、臨床でHDAC阻害薬を使った症例のサンプルは得られにくくなっている点は大きな障壁となっております。
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今後の研究の推進方策 |
HDAC阻害剤を患者検体に暴露し、miR-188とmiR-210の機能解析を検討する予定です。 HDAC阻害薬は臨床では使う機会が減ってしまったため、凍結検体を中心に検討を行います。 また、miR-188やmiR-210を恒常的に発現またはノックダウンした細胞株を樹立し、免疫不全マウスに骨髄移植または皮下移植を施行します。
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次年度使用額が生じた理由 |
2万円少々の余剰資金がでましたが、次年度の試薬購入に充足したいと思います。
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