研究実績の概要 |
我々の研究グループではmicroRNAの機能解析による造血器腫瘍の分子病態解明と新規治療戦略の検討を行ってきました。今回の研究では、多発性骨髄腫の新規治療薬であるHDAC阻害剤パノビノスタットの抗骨髄腫効果(標的遺伝子)解明と感受性患者の層別化を目指してデータをとっています。細胞株(n=2)を用いた網羅的microRNA発現解析の検討では、パノビノスタット、ボリノスタットの2つのpan-HDAC阻害薬によって、共通して変動するmiRNAとして6つの上昇miRNAと抑制miRNAを特定しました。 上昇したmiR-188は、我々の患者検体(n=4)の検討では非常に抑制を受けていることがわかり、さらに病気の進展により有意に低下することを見出しました。miR-188の標的mRNAはIL-6レセプターサブユニット(IL6ST)であり、miR-188の細胞株(n=6)への導入によりIL-6Rの発現が低下しました(フローサイトメトリー、qRT-PCR)。 また、miR-192も上昇を認めましたが、miR-192は、以前我々が骨髄腫における新規がん遺伝子として報告したDIMT1(Ikeda et al., Cancer Sci, 2017)を抑制することがin cilicoで予測されました。miR-192を細胞株(n=6)に導入すると、DIMT1の発現が有意に抑制されました。さらに、HDAC阻害薬を細胞株(n=6)と患者検体(n=2)に添加することで、DIMT1が著しく抑制されるとともに、DIMT1が正に制御するがん遺伝子IRF4も抑制され、有意に細胞死が増加しました。 現在、免疫不全マウスに対するmiR-188、miR-192強制発現細胞株移植により、生存期間の検討を行っており、報告に向けて準備中です。
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