研究実績の概要 |
本研究は、RNAシーケンシングを用いて、自己免疫性骨髄不全の再生不良性貧血を発症させるT細胞の新規シグナルパスウェイを同定することである。T細胞をセルソーターを用いて分離し、RNAを単離した後、RNAシークエンスを行うことによって、再生不良性患者に特徴的なT細胞サブセットの遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析する。応募者が以前所属していた国立アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)、国立心肺血液研究所 (NHLBI; National Heart, Lung, and Blood Institute)、血液部門(Hematology branch)で行っていた研究の延長として、再生不良性貧血の類縁疾患である骨髄不全型PNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)の患者検体・シークエンスデータを用いて解析を行ったところ、TNFR, IGF1, NOTCH, AP-1, ATF2 pathwayなどのパスウェイに関連した遺伝子群の発現が有意に変化している事が分かった。さらにそれらの候補遺伝子群の中から、JUN, TNFAIP3, TOB1, GIMAP4,GIMAP6, TRMT112, NR4A2, CD69, TNFSF8などのT細胞の活性化・制御に関わるような遺伝子の発現がそれぞれのT細胞サブセットにおいて有意に変化していることが、qPCRやフローサイトメトリーにより確認された。骨髄不全型PNHにおいてT細胞を正または負に制御する因子が同定されたことから、これらの遺伝子をターゲットとした治療への応用が期待される。一方、再生不良性貧血の検体は患者検体や細胞数などの問題から、十分な解析を行う事が困難であった。
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