研究課題
本研究の目的は,血小板活性化受容体CLEC-2が敗血症治療の標的分子となることを見据え,敗血症病態におけるCLEC-2の役割を解明することである.令和元年度では,敗血症マウスモデルの再検証を行った.敗血症の誘導には大腸菌(0111:B4)由来LPSを用いた.さらに,血小板CLEC-2の影響を調べるために,抗マウスCLEC-2抗体(クローン名:2A2B10)を腹腔内投与することで,血小板のCLEC-2を欠損状態を作製した.2A2B10の投与によってCLEC-2依存性の血小板凝集が起こるために一過性の血小板減少を来すが,4日後には2A2B10投与前の血小板数に戻ることを確認した.2A2B10投与の対照としてラットIgGを腹腔内投与した.タイムスケジュールとしては,敗血症誘導の4日前に2A2B10あるいはラットIgGを投与し,LPS投与後は10日間生存の有無を検証した.結果,有意差は無かったが,2A2B10投与群では,生存率が低かった.盲腸穿刺による敗血症モデルでは2A2B10投与群では生存が有意に改善されたことと一致しなかった.その理由として,LPSによる敗血症が,CLP法に比して,急激に起こってしまうことで,CLEC-2の影響が反映していないことを示唆した.CLP法では生存曲線において生存率は緩やかに減少であるが,LPSでは2日ほどで急激に生存率が減少していた.また,低用量のLPSでは全く敗血症を誘導できないことも確認した.つまり,LPSによる敗血症の誘導は,あるい閾値を超えた場合は,一過性に起こる.しかし,閾値以下の場合は,まったく敗血症が起こらない.さらに,LPSの感受性は,飼育環境の影響を受けることも明らかとなり,さらなる検証が必要であった.
すべて 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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https://www.med.yamanashi.ac.jp/clinical/clin0lab/