研究課題
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)のBCR遺伝子切断点として、Major-BCR(Ma-BCR)とminor-BCR(mi-BCR)の大きく2つの代表的なものが存在することが知られているが、その分子遺伝学的意義は明らかとはされておらず、今回新たな着目点して研究を進めている。本年度は、初診時において正常血球の同定が困難であった症例において、二重染色を用いて再検討を行った。さらに、初診時の細胞をフローサイトメトリーを用いて分画別に分取し、それぞれの分画における融合シグナルを検討するとともに、遺伝子発現プロファイルの検討を行っている。また、Ph+ALLでは同種造血細胞移植が重要な根治療法と位置付けられているため、日本造血細胞移植学会のレジストリーデータを用いてMa-BCRとmi-BCRの移植成績への影響を検討した。1. MPO染色との二重染色を行うことでごく少数の芽球以外の血球系統にBCR-ABL融合シグナルを検出することが可能となり、Ma-BCRの大多数のみでなく、mi-BCRの一部でも芽球以外に融合シグナルが検出されることが明らかとなった。2. 初診時細胞をフローサイトメトリーで分画ごとに分取して融合シグナルを検討し、FISH法とは別の方法でも芽球以外に融合シグナルが認められることを確認している。3. BCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統の分類は BCR遺伝子切断点のみで分かれるものではないことが示唆されたため、遺伝子発現プロファイルを検討し、新たな分類が可能であるかを検討している。4. 移植時のMRDと移植ソースによってBCR遺伝子切断点の移植成績に及ぼす影響は異なることを示唆するデータが得られ、現在結果をまとめているところである。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた形態的な区別では難しい症例でも二重染色を行うことで芽球以外の血球を同定してBCR-ABL融合シグナルの見られる血球系統をより詳細に検討できた。また、BCR遺伝子切断点の治療成績への影響についても順調に検討が進めることができている。
研究計画当初はBCR遺伝子切断点によってBCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統が分かれることを想定していたが、一部の症例でBCR遺伝子切断点の違いとBCR-ABL融合遺伝子の発現している血球系統の違いが一致しない例があることが明らかとなったため、遺伝子発現プロファイルを検討してその意義を分子遺伝学的にさらに踏み込んで検討する予定である。
BCR遺伝子切断点による数種類の遺伝子変異パターンの違いを調べる予定であったが、BCR遺伝子切断点のみでBCR-ABL融合遺伝子の発現する血球系統が分かれるわけでは必ずしもないことが判明したため、遺伝子発現プロファイルのパターンの違いを次年度に検討することとしたため。次世代シークエンサー(NGS)を用いた遺伝子発現プロファイルの解析を計画しており、NGS関連の試薬等に使用する予定である。
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