研究課題
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)のBCR遺伝子切断点として、Major-BCRとminor-BCRの大きく2つの代表的なものが存在することが知られているが、その分子遺伝学的意義は明らかとはされておらず、新たな着目点して研究を進めてきた。本年度は、初診時の骨髄細胞を造血幹細胞/多能性前駆細胞 骨髄球系/リンパ球系共通前駆細胞 白血病細胞、成熟B細胞、成熟T細胞、骨髄球に分取し、PCR法を用いて、BCR-ABL融合遺伝子検出を行った。また、Ph+ALLの約7割で認められるIKZF1遺伝子欠損のパターンの検討も行った。検討した6例全例で白血病細胞にBCR-ABL融合遺伝子が検出され、さらに4例では造血幹細胞/多能性前駆細胞でもBCR-ABL融合遺伝子が検出された。BCR-ABL融合遺伝子発現系統の違いによるIKZF遺伝子欠損のパターンの違いは認められなかったが、BCR-ABL融合遺伝子が検出された血球系統とIKZF遺伝子欠損を認めた血球系統は一致していた。昨年度実施したFISHによるBCR-ABL融合遺伝子シグナル発現血球系統の検討と合わせ、初発Ph+ALLの36%で白血病細胞以外の造血幹細胞/多能性前駆細胞レベルでBCR-ABL融合遺伝子遺伝子が発現していることが明らかとなった。当初はBCR遺伝子切断点の違いによりBCR-ABL融合遺伝子が発現している血球系統が異なることを想定していた。しかし、Major-BCRで白血病細胞以外にBCR-ABL融合遺伝子が発現している例が多いものの、minor-BCRの一部でも白血病細胞以外にBCR-ABL融合遺伝子の発現が認められた。そこで、白血病細胞以外のBCR-ABL融合遺伝子の発現の有無により治療成績の違いを検討したところ、白血病細胞以外のBCR-ABL融合遺伝子の発現を認める症例で生存率が良い結果であった。
3: やや遅れている
BCR遺伝子切断点に加え、BCR-ABL融合遺伝子が発現している血球系統による分子遺伝学的検討および予後に関する検討を行い、予定していた検討は順調に実施することができた。当初は国際学会で発表および議論を行い、研究内容のブラッシュアップを行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響により発表が決定していた国際学会が中止となったため。
R2年度に国際学会で発表を行って、議論を深めた上で、論文発表を行い、研究成果をまとめる予定である。
新型コロナウイルスの影響で発表が決定した国際学会が中止になったため。R2年度に別の国際学会で発表し議論を深めた上で、最終結果を論文としてまとめる予定。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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