研究課題
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)におけるBCR-ABL融合遺伝子を発現する血球系統の違いとBCR切断点の影響を明らかにすることを目的として研究を実施した。BCR-ABL融合遺伝子が発現している血球系統は、末梢血好中球蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、骨髄クロット標本の組織FISH、フローサイトメトリーで分取した分画におけるBCR-ABL融合遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のいずれかの方法で、白血病芽球以外の血球系統においてBCR-ABL融合遺伝子発現がみられるものを多系統Ph発現(Multi-Ph)と定義した。また、PCR法によるIKZF1欠失パターンの解析、BCR-ABL遺伝子発現系統の違いと治療成績との関連も検討した。59人中21人(36%)がMulti-Phと同定された。Multi-Phでは、BCR-ABL融合遺伝子発現が多能性前駆細胞レベルで検出された。21人中17人(81%)で、BCR切断点はmajor BCRであり、Multi-Phはmajor BCRに有意に多い結果ではあったが、完全には一致していなかった。IKZF1の欠失の解析ではMulti-Phに特徴的パターンは同定されなかった。一方で、Multi-Phの患者では、白血病芽球のみにBCR-ABL融合遺伝子発現がある患者と比較して生存率が良いことが判明した(4年無イベント生存率:74% vs. 33%、P=0.01;4年全生存率:79% vs. 44%、P=0.01)。多変量解析では、Multi-Phは無イベント生存と全生存に対する予後良好因子として同定された。本研究により、Ph+ALL患者の3分の1以上がMulti-Phであることが確認された。Multi-Phの分子遺伝学的な特徴は明らかとされなかったが、Multi-Phはより良い治療成績と関連していた。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Frontiers in Oncology
巻: 10 ページ: 586567
10.3389/fonc.2020.586567