研究実績の概要 |
ヒト骨髄腫細胞株(U266, RPMI8226, KMS11等)において交感神経受容体のmRNAレベルでの発現が確認された。汎βアドレナリン受容体作動薬を用いたin vitroでの解析では濃度依存性に骨髄腫細胞の著明な増殖抑制効果を認め、アポトーシスを誘導することが分かり、形態学的な変化も確認できた。これにより、骨髄腫細胞が交感神経刺激を介して制御される可能性が示唆された。さらに、選択的βアドレナリン受容体作用薬を用いた解析を行い、特定のβ受容体作動薬に対して抗腫瘍作用を示すことを見出した。交感神経作動薬と既存の抗骨髄腫瘍薬(bortezomib, lenalidomide, dexamethason)と併用した系では、明らかな相乗効果は確認されなかった。現在ウェスタンブロット法にて、交感神経刺激によるアポトーシス関連のシグナル経路への影響を代表的な骨髄腫細胞株であるU266を用いて解析中である。マウス骨髄腫モデルで用いる予定であるマウス骨髄腫細胞株である5TGM1-lucでも同様の交感神経作動薬によるアポトーシス誘導効果が確認できており、今後in vivoでの解析を計画中である。マウスモデルでは交感神経作動薬の至適投与量や投与経路について検討を行っている。更に当該アドレナリン受容体遺伝子の骨髄腫細胞に及ぼす影響について明らかにするため、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子ノックアウト実験を進めており、遺伝子導入に必要な各種プラスミドを得ており、電気穿孔法を用いた導入をおこない限界希釈下で培養を行っている段階であり、蛋白発現レベルでノックアウトできているか評価する予定である。
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