本研究は、固形癌や造血器悪性腫瘍に対する抗癌剤または放射線治療後に発症した治療関連白血病について、発症に至る病態を明らかにすることを目的としている。本研究では、臨床データベースの構築を図り、その後に保存検体の解析の同意が得られた症例について分子生物学的および病理学的解析を行った。 初年度からの開始した長崎県の疫学データベースを構築した。83例が治療関連白血病83例の詳細な臨床情報の収集も終了し、臨床的な特徴について解析を行った。治療関連白血病のうち、放射線治療後の症例と化学療法後の症例を比較したところ、染色体異常の種類に違いがあることを見出した。この点は欧米からの報告とは違いがあり、本邦における治療関連白血病の特徴である可能性がある。現在論文投稿準備中である。 また、本研究で収集した検体を用いて以下の3つの論文発表を行い、1つは現在も解析が進行中である。1つはアザシチジン治療後に発症した肺胞蛋白症を合併した骨髄異形成症候群について、次世代シーケンサを用いた遺伝子異常解析を経時的に行い、クローン進展を報告した(Intern Med. 2020;59(8):1081-1086.)。2つめは、急性前骨髄性白血病に対する化学療法後に発症した、微小な染色体異常を次世代シーケンサにて経時的にモニタリングし、クローン性造血への進展を報告した(Int J Hematol. 2020;111(2):311-316.)。3つめは、造血器腫瘍に対して実施した同種造血幹細胞移植後に発症した二次性悪性腫瘍について病理学的検討を行い、その発症において免疫学的機序が関与している可能性を報告した(Int J Hematol. 2020;112(4):524-534.)。また、現在は抗癌剤治療後に発症した二次性急性リンパ性白血病のクローン進展を、遺伝子異常の観点から解析を行っており、論文投稿準備中である。
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