研究課題/領域番号 |
17K16190
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
梅本 晃正 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特任助教 (50620225)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
IFNγ刺激によって、造血幹細胞のミトコンドリア膜電位や活性酸素がやや上昇することは確認されたが、5-FU投与後に観察される増殖期造血幹細胞よりは、いずれも著しく低かった。さらに、IFNγ刺激によって、mTORシグナル関連の遺伝子群の低下、及び、小胞体ストレス関連遺伝子群の発現上昇を誘導していることも見出しているものの、これらの傾向も5-FU投与後に観察される増殖期造血幹細胞よりは小さかった。一方で、5-FU投与後に観察される増殖期造血幹細胞ではIFNγ関連遺伝子の発現が低下していることを見出した。 一方で、造血幹細胞の分裂誘導時に、①カルシウムブロッカー処理によって分裂速度が著しく遅延すること、②アデノシンA2受容体を介したシグナル誘導においても同様な効果が観察されること、③いずれの処理によって誘導される造血幹細胞のslow cell divisionは、通常の分裂誘導時により、分裂後の幹細胞性の維持に寄与していることを見出した。 さらに、興味深いことに、カルシウムブロッカー存在下でのIFNγ処理時が、カルシウムブロッカー非存在下での処理と比較して、造血幹細胞の分裂速度に大きな影響を与えることなく、幹細胞表現型を喪失させる効果が著しく上昇する一方で、アデノシンA2受容体を介したシグナル誘導下では、IFNγの幹細胞性喪失効果が軽減されていた。 これらの結果は、IFNγによる幹細胞性喪失のメカニズム解明に大きな手掛かりとなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに研究を行い、全てが予想通りの結果とは行かなかったものの、造血幹細胞の自己複製分裂の新しい制御メカニズム解明の糸口となる結果を得ることが出来たことや、分裂を伴わなずに幹細胞性喪失が誘導される現象を見出し、いずれも本研究において重要な指針となる結果であると考えれる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度の研究成果のによって明らかになった5-FU投与後に観察される増殖期造血幹細胞(IFN関連遺伝子が低下している造血幹細胞)の幹細胞性制御機構、及び、アデノシンA2受容体を介したシグナルによるIFNγ応答の制御にも着目して、IFNγが造血幹細胞活性を負に抑制するメカニズムを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
民間の研究助成を獲得することができ、そちらの資金を使用したため。
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