造血幹細胞は全ての血液細胞の源となる細胞である。自己複製分裂または分化分裂を介して自己の維持と血液細胞の産生を担っている。近年、造血幹細胞の運命(自己複製、分化)にミトコンドリアの質・機能が寄与していると報告されている。ミトコンドリアは細胞内小器官の一つで細胞のエネルギー代謝を担っている。また、ミトコンドリアの質が低下すると、造血幹細胞は分化傾向へ分裂傾向を変化させるが、ミトコンドリアの質の維持にはオートファジーが重要な役割を果たし造血幹細胞の維持に寄与していると考えられる。実際にオートファジーを欠損させた造血幹細胞では幹細胞性維持が阻害されると報告されている。しかし、詳細な阻害機構は未だに明らかになっていない。一方で幼児期造血幹細胞は成体型造血幹細胞よりもよく分裂しているが、幹細胞性はよく保たれている。実際に幼児期造血幹細胞のミトコンドリアに焦点を当て解析を行うと、ATP産生速度が速く、ミトコンドリアの膜電位が成体造血幹細胞に比べ10倍程度高値を示すが、ミトコンドリア内の活性酸素種の産生は成体造血幹細胞と同程度を示すなどミトコンドリアの質がよく保たれていることを明らかにした。申請者は、オートファジー関連遺伝子欠損マウス(Atg7KO)マウスを用い、ミトコンドリアの機能中心に解析を行ったところAtg7KOは年齢依存的に造血幹細胞の機能を阻害していることを確認した。また、Atg7KOは骨髄環境を変化させ、間接的に造血幹細胞の枯渇を誘導していることを明らかとした。現在以上の内容で論文執筆中である。
|