慢性骨髄性白血病(Chronic myelogenous leukemia ; CML)はBCR-ABL融合遺伝子による恒常的なチロシンキナーゼ活性が病態に寄与することで特徴づけられる骨髄増殖性疾患の一つである。チロシンキナーゼ阻害剤の開発により劇的に生命予後は改善しているが、チロシンキナーゼ耐性、あるいは初発時急性期の症例は未だ予後不良であり、新たな治療戦略の開発が必要である。 まず、CML急性転化細胞株を用いて、様々な作用機序を持つ薬剤をスクリーニングし、その有効性を検証した。するとその中でも特に転写因子Sp1を標的とした薬剤が有効であることが明らかになった。これらの薬剤を作用させたときのBCR-ABL発現の変化を検証するとタンパク質レベルの発現低下がみられるが、mRNAはむしろ上昇していた。つまり、Sp1を標的とする薬剤は転写レベルではなくタンパク質レベルでBCR-ABLの発現低下をきたしていることが示唆された。また、Sp1をノックダウンするとそれらの薬剤に対し、より感受性を示すようになり、Sp1がCMLにおける薬剤感受性にも寄与すること発見した。さらにSp1をノックダウンさせた細胞株ではマイクロアレイにおいてオートファジー関連遺伝子の発現変化が見られた。Sp1における薬剤耐性の誘導とオートファジー関連遺伝子の発現との関係については詳細は明らかになっておらず、現在解析を進めている。
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