本研究では複数の臍帯血から純化された造血幹・前駆細胞を効率的に採取する方法の確立を目指してきた。前年度に引き続き、我々は、凍結臍帯血由来造血幹・前駆細胞を一貫した閉鎖系で採取することにより、清潔かつ簡便な細胞採取のプロセス開発を行った。我々の開発した方法では、培養を介さないことにより、コンタミネーションのリスクを軽減するのみならず、コストダウンにもつながることも期待される。本年度は、Miltenyi Biotec社のCliniMACS Prodigy機を用いて前年度までに検討してきた各プロセスの細胞処理条件を洗練するとともに、この方法で得られた細胞の造血能力を評価することに努めた。 臍帯血移植では好中球だけでなく特に血小板回復の遅れが予後を規定することもあり、臨床的に極めて重要な問題点であるため、得られた複数臍帯血由来のCD34陽性細胞の骨髄球系、赤芽球系並びに巨核球系コロニーの形成能に焦点を当てて、in vitroのコロニーアッセイを行い、造血活性を評価した。 我々が考案した方法で得られた造血幹・前駆細胞を用いて、in vitroのコロニーアッセイを行ったところ、骨髄球系や赤芽球だけではなく巨核球のコロニー形成能も十分に有していることが確認された。 また、本法での造血幹細胞の取り残しがないかを確認するために、造血幹細胞以外の細胞分画も同時に全てbag内に回収した。フローサイトメトリーによる解析では、この細胞の中にCD34陽性細胞の残存は少なく、またこの細胞を用いてコロニーアッセイを行ったところ、骨髄球系、赤芽球系並びに巨核球系のコロニー形成能も有していないことが確認された。 さらに凍結臍帯血のみならず、採取後48時間以内の臍帯血を用いて、同様の処理を行い、造血幹・前駆細胞を一貫した閉鎖系で採取する方法も開発した。
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