研究課題
フィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性腫瘍(以下MPNと略する)は、造血幹細胞レベルに体細胞変異が生じることで引き起こされる造血器の腫瘍である。MPNを引き起こすドライバー遺伝子変異として、JAK2、MPL、CALR変異が同定されているが、これらの遺伝子変異の検出されないtriple-negative症例が存在しており、その一部は予後不良との報告がある。これまでに、申請者の所属する研究室では、MPN疑い1804症例における、JAK2変異、CALR変異、MPL変異の有無と、各患者の臨床情報を収集し、WHO2008診断基準を用いて、triple-negative MPN確定症例を同定し、次世代シークエンサーを用いて全エクソン配列を決定した。そして、得られた配列情報を元に、腫瘍検体に共通するこれまでに報告のない新規体細胞遺伝子変異を同定し、新規のドライバー変異候補遺伝子とその野生型遺伝子を発現するBa/F3細胞を用いて、細胞の増殖アッセイを行い、変異遺伝子導入細胞がサイトカイン非依存性の細胞増殖能を有することを確認した。一方、ドライバー遺伝子変異として報告されているMPLの野生型遺伝子を発現するBa/F3細胞を、そのリガンドであるTPO非依存下で数週間培養すると、リガンド非依存性に細胞増殖し、MPL下流のシグナル伝達経路の恒常的な活性化が生じることが明らかになった。これは、野生型MPLによる下流シグナル伝達因子の恒常的な活性化がMPNの新たな発症メカニズムである可能性を示唆している。つまり、本研究の研究成果に基づいたさらなる研究の推進により、triple-negative MPN発症の新たな分子基盤が解明され、患者の迅速な診断法や、有効な治療法の開発に直結することが期待される。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件)
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