研究課題/領域番号 |
17K16197
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
戸田 侑紀 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (40779724)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エクソソーム / 細胞内移行 / MLL白血病 / 多発性骨髄腫 / オートクライン |
研究実績の概要 |
血液がん細胞に対して移行性を示すエクソソームおよびその脂質成分で再構成されるリポソームを同定するために、各種血液がん細胞株よりエクソソームを単離し分泌元細胞への取り込み能について網羅的なスクリーニング解析を行った。血液がん細胞培養上清から得られるエクソソームの精製量は固形がん細胞からのものよりも少なかったため、精製プロトコルを一部改変した。これまでに固形がん細胞に対して高い移行性が確認されているグリオブラストーマ分泌エクソソームおよびその脂質成分リポソームにおいて、血液がん細胞株数種への移行性はみられなかった。一方で、多発性骨髄腫細胞(MM)株(OPM-2)やMLL遺伝子の再構成がみられる血液がん(以下MLL白血病)細胞株数種 (THP-1、RS4;11)によるエクソソームのオートクライン現象を共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析により見出した。またMM低酸素適応株のがん幹細胞分画において、TGF-β/Smadオートクラインシグナルが幹細胞性維持に寄与していることを同時に明らかにしている。本シグナルがエクソソーム膜表面上のTGF-βを介したものである場合、そのシグナル伝達に乗じてsiRNAを細胞内に導入できるのではないかと考えている。すなわちMM幹細胞を標的とした薬物送達も可能になると予想している。 siRNAなどの核酸医薬品を用いた遺伝子治療は血液がん細胞への有効なデリバリー技術の不在により進んでいない。本研究成果は、その解消に繋がる大変意義深い成果である。乳児白血病の多くを占めるMLL白血病は既存の化学療法に対する抵抗性が高く、これまでにない有効な治療法の開発が求められている。このような難治性がんに対する新規治療法開発の基盤となる本研究成果は極めて重要であり、今後も引き続き推進していくべき課題と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標である「血液がん細胞への移行性を示すエクソソームおよびその脂質成分で再構成されるリポソームを同定」において、前半部のエクソソームの同定は完了している。しかし、そのエクソソームの脂質成分リポソームが同様の移行性を示すかについては検討できていない。よって目標の少なくとも50%は達成されていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
再構成されたMLL遺伝子を標的とした核酸医薬品を同定したエクソソームに搭載し、その治療効果を評価する。再構成された塩基配列を認識するsiRNAは標的配列を含まない正常細胞に作用しないと考えられるため、有望な治療法の一つになると考えられる。生物由来であるエクソソームをデリバリー担体として臨床応用する場合にはハードルが高いため、本来は製造や品質の管理が比較的容易な脂質リポソームとして最適化されたものを用いるべきではある。しかし、新規治療法の開発を急ぐMLL白血病を対象としていることから、上記で進めることとした。
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