血液がん細胞に対して効率的にsiRNAを導入する技術は未だ開発されていない。本研究の前年度成果において、MLL遺伝子の再構成がみられる血液がん(以下MLL白血病)細胞株数種(THP-1、RS4;11)が自身の分泌するエクソソームを再取り込みすることを見出している。そこで本年度は、同エクソソームに治療薬となるsiRNAを導入しその有効性を検証した。蛍光標識したsiRNAとエクソソームの混合液に一定の電圧をかけたのち(電気穿孔法)、それを細胞に処置するとsiRNA由来蛍光が細胞内で検出された(共焦点レーザー顕微鏡による観察)。電圧をかけずに処置した場合には細胞内にて蛍光が観察されなかった。よって、siRNAを電気穿孔法にてエクソソーム内へ搭載し細胞内に送達させることに成功した。 続いて、MLL再構成遺伝子mRNAの一つ(MLLAF9)を標的とするsiRNAを上記の方法で細胞内に導入し、それが機能するかを検証した。MLL白血病発症の責任分子を発現抑制することにより細胞死が生じると考え、細胞毒性評価を行った(LDHアッセイ)。siRNA導入により有意な細胞毒性は検出されなかった。siRNAが分子レベルで機能しているかを確認するためにqRT-PCR解析を行った。MLLAF9の発現量はsiRNA導入の有無により変化しなかった。以上より、RNAi干渉を引き起こすに十分なsiRNAが導入されず細胞毒性が確認できなかったことが可能性として示唆された。解決策として、エクソソームの取り込みを活性化する刺激因子との併用によりsiRNAの細胞内導入量の向上を図る。
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