精神的ストレスがアレルギー疾患に影響を与えるメカニズムは依然不明である。申請者らは哺乳類における約24時間周期性の生理活動を司っている概日時計がアレルギー反応の重要な制御因子であることを明らかにしてきた。一方、近年、概日時計の機能は精神的ストレスによって強く影響されることがわかりつつある。そこで本研究は「精神的ストレスは概日時計機能に影響し、その結果アレルギー病態を変化させる」という仮説をマウス実験系を用いて証明することを目的とした。具体的には、拘束ストレスをマウスに与え、in vivo イメージング法を用いたマスト細胞概日時計機能への影響、受身型IgE依存性皮膚反応(PCA反応)への影響、腹腔マスト細胞におけるIgE受容体シグナル関連分子群及び時計遺伝子群の発現への影響について解析した。その結果、拘束ストレスがマスト細胞の概日時計の位相を変化させること、PCA反応の強さの時間依存性を変化させること、IgE受容体の発現レベルの時間依存性を変化させることが明らかになった。したがって、精神的ストレスは概日時計機能を変化させることによってアレルギー反応に影響を与える可能性が示唆された。本研究成果は“こころ”と“アレルギー”の関係という21世紀に残された大きな謎の1つを解明する端緒となる成果であり、ストレスー概日時計ーアレルギーの関係を今後さらに研究することによって現代のストレス社会におけるアレルギー反応の成り立ちの理解に役立つと考えられる。
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