研究実績の概要 |
我々は質量分析を用いた血清プロテオーム解析によりANCA関連血管炎(AAV)の活動性、臓器障害マーカーを見出している。それらのマーカータンパク質によるマクロファージのサイトカイン・ケモカイン放出作用を解析した。健常人8名のPBMCから磁気細胞分離法でCD14+単球を単離後、M-CSFを含むM-SFMで7日間培養しマクロファージに分化させた。小麦胚芽無細胞タンパク質合成法で作成した可溶性CD93(200ng/mL、1μg/mL、3μg/mL)を加え、2日培養後の上清を回収しELISA法でTNF-α、IL-6、IL-8を測定した。TIMP1(2μg/mL)、LRG1(10μg/mL)、S100A8/A9(20μg/mL)、H4(50μg/mL)でも同様に検証した。200ng/mL、1μg/mL、3μg/mL のsCD93刺激下で、濃度依存的にTNF-α(4.0, 85.1, 729.1pg/mL)、IL-6(3.6, 186.6, 941.5pg/mL)、IL-8(2.4, 6.6, 7.3ng/mL)は上昇した(n=1)。TIMP1、LRG1、S100A8/A9、H4で刺激後も、TNF-α、IL-6、IL-8は上昇したがsCD93と比較し低値であった。多検体(n=8)においてコントロールと比較しsCD93(3μg/mL)刺激下で、TNF-α(1.6 vs 245pg/mL, p<0.001)、IL-6(1.3 vs 749pg/mL, p<0.001)、IL-8(0.05 vs 9.9ng/mL, p<0.001)は有意に上昇した。CD93は単球や血管内皮細胞に発現する膜タンパク質で、炎症刺激で発現が増強し一部が切断され可溶型となり、マクロファージのTNF-α、IL-6、IL-8産生を亢進させることでAAVの炎症ループを形成することが考えられた。
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