研究実績の概要 |
我々は質量分析による選択的反応モニタリング法を用いた血清プロテオーム解析により、ANCA関連血管炎(AAV)の新たな疾患活動性マーカーとして8種類の活動性マーカー候補を同定し、その中で、治療前および治療6ヶ月後の疾患活動性をCRPやMPO-ANVAよりも鋭敏に反映する優れた活動性マーカーとしてTissue Inhibitor Of Metalloproteinase 1(TIMP-1)を見出した。また腎障害(腎予後予測)マーカーとしてCD93、Transketolase(TKT)を見出した。AAV患者の血管炎部位(皮膚、胃、腎)の生検組織を用いて免疫染色を行い、新規バイオマーカーの産生細胞を解析した。AAV患者の皮膚、胃粘膜および腎の血管炎部位では、TIMP-1はS100陽性間葉系細胞から強く発現されており、CD3、CD19, CD68またはCD31陽性細胞からの発現はほとんど認められなかった。一方で、CD93はCD31陽性の血管内皮細胞から高発現されており、CD3、CD19またはCD68陽性細胞からの発現はほとんど認められなかった。腎病変においてもCD93は係蹄壁に沿いにCD31陽性の内皮細胞から強く発現されていた。さらに、マーカータンパク質によるマクロファージのサイトカイン・ケモカイン放出作用を解析した。小麦胚芽無細胞タンパク質合成法で作成した可溶性CD93(200ng/mL、1μg/mL、3μg/mL)は、濃度依存的にマクロファージからのTNF-α、IL-6、IL-8産生を亢進させた。CD93は単球や血管内皮細胞に発現する膜タンパク質で、炎症刺激で発現が増強し一部が切断され可溶型となり、マクロファージのTNF-α、IL-6、IL-8産生を亢進させることでAAVの炎症ループを形成することが考えられた。
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