喘息をはじめとするアレルギー性疾患の発症には、アレルゲンに対する寛容性の破綻(免疫寛容の破綻)が大きく関与すると指摘されている。本研究では、免疫寛容の破綻がストレス負荷で産生される内因性グルココルチコイド(GC)により起こると仮説を立て、精神的ストレスによるアレルギー性疾患の発症と免疫寛容破綻の関係を明らかにすることを目的とする。 昨年度までに免疫寛容を機能・維持させるために重要な働きをしている制御性T細胞(Treg)誘導が、精神的ストレスにより抑制されることを明らかにした。今年度は、このストレスによるTreg誘導の抑制には、ストレスに対する生体応答であるGC遊離が関与することを検証し、アレルギー疾患である喘息発症のリスクを増大させることを明らかにする。 マウスモデルを用い、ストレス負荷により血液中のGCが上昇することを確かめた。そして、GC遊離効果を妨げる目的で、ストレスマウスにGC拮抗薬を使用した。その結果、ストレス負荷によって起きていたTreg誘導の抑制が解除され、Tregが再び増加した。さらに、Tregが誘導されたことに続き抗原感作も起こり難くなり、喘息症状が著しく軽減された。また、成人期および幼少期ストレスのモデルマウスを用い、ストレス暴露の時期についても検証行った。その結果、どちらの期においても、ストレスはTreg誘導を抑制し抗原感作と喘息症候を惹起することが明らかになった。 本研究の結果から、精神的ストレスによる喘息の発症には、免疫寛容の抑制が関与することが明らかとなった。その機序として、精神的ストレス対する生体応答であるGC遊離が、制御性T細胞の誘導を抑制すること、それに引き続く免疫寛容の獲得を妨げること、その結果抗原感作を助長させ喘息の発症リスクを増大させることが明らかになった。
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