研究課題/領域番号 |
17K16217
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
矢作 綾野 川崎医科大学, 医学部, 助教 (10584873)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 関節炎動物モデル / gp130F759 / Mycoplasma fermentans / 関節リウマチ / ノックインモデル |
研究実績の概要 |
Mycoplasma fermentans(Mf)は関節リウマチ(RA)患者の関節液、関節滑膜組織、末梢血液中に検出され、RA発症との関連が示唆される微生物の一つである。本研究ではIL-6ファミリーサイトカインの受容体gp130の点変異によりRA様自己免疫性関節炎を自然発症するノックインマウスgp130F759を用いてMfの全身性感染から関節炎発症までの役割を解明することを目的している。 1. Mf感染後の滑膜表層に存在する線維芽細胞様滑膜細胞を検出するために昨年度搬入したCol1a1-ECFPトランスジェニックマウスをgp130F759と交配しCol1a1-ECFP/gp130F759を作出した。Col1a1-ECFP陽性細胞の検出条件を検討し、滑膜表層における少数の陽性細胞を確認した。 2. Mf感染における関節炎惹起での獲得免疫の関与を検討するため、Mf感染後抗体投与し、感染1か月後まで関節炎発症の有無を検討した。その結果、感染1ヶ月後の関節滑膜細胞総数は抗体除去により減少したものの、四肢の関節可動域に軽微な制限を認めたことから関節炎を完全に抑制することはできなかった。 3. 関節炎の治療薬としてマイコプラズマ肺炎の治療で行われる抗生剤投与がMf感染での関節炎発症を抑制できるのか、検討した。Mf感染後の様々な時期に抗生剤を投与し、感染1ヶ月後の関節炎の程度を検討したところ、抗生剤投与時期により関節炎発症度合いが異なることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)M.fermentans(Mf)感染gp130F759の関節炎発症時に見られる病理像の詳細解析;滑膜関節組織における蛍光免疫染色観察条件を設定した。関節リウマチの主病変となる滑膜表層の細胞、マクロファージ様のTypeA滑膜細胞と線維芽細胞様のTypeB滑膜細胞を検出するCX3CR1-eGFP/gp130F759、Col1-ECFP/gp130F759を作出し、gp130F759における造血系細胞も抗体染色で検出が可能となった。 2)関節炎惹起での獲得免疫関与検討;中和抗体によるT、B細胞の除去が関節炎惹起を一部抑制することが明らかとなった。これはMf感染が自然免疫だけでなく、獲得免疫に関与することを示唆している。 3)Mf感染から関節炎発症までに関与する信号伝達経路の解析と新たな治療戦略の探索;処置した抗生剤投与が関節炎発症の程度を左右する結果は薬剤投与実験において重要な発見であると考えられる。続けてMf感染におけるin vivoでのIL-6の信号伝達系を確認する予定であったが実験に使用予定する十分なマウス数を確保できなかった。 項目の一部において、達成度に課題があるもののおおむね順調に進んだと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)Mf感染後の関節におけるMfの局在を検証する。これまでに行ってきた条件設定を基に蛍光色素で標識したMf感染後、関節におけるMfの局在を検証し、感染後から関節炎発症までに増加する造血系細胞(好中球、B、T細胞)と非造血系細胞(線維芽細胞)について明らかにする。 2)関節炎惹起での獲得免疫関与検討において抗体投与により関節炎発症を部分的に抑制することが判明した。Mf感染後の血清や細胞を移入し関節炎惹起に必須な細胞を特定する。 3)-1 IL-6KO/gp130F759を用いた感染実験を行いin vivoでのマイコプラズマ感染とIL-6信号伝達が関節炎発症に必須なのか検討する。3)-2 感染の治療として考えていた抗生剤は種類・投与時期・使用量を検討し、効用の高い投与方法を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究施行項目の一部において停滞したために、当初の計画より使用額が下回ってしまったが、今年度中に困難であった課題解決に至ることができた。今年度使用しなかった機器、試薬類は来年度購入予定である。
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