研究課題
全身性強皮症は肺高血圧症や間質性肺炎を合併し予後不良であるにも関わらず、血管病変と自己免疫という異なる二つの病態が混在し根本的治療は存在しない。そこで強皮症患者における(1)血管障害:ビデオ顕微鏡を用いた毛細血管の形態的評価と(2)自己免疫:免疫細胞フェノタイプの網羅的評価を合わせて、これまでにない革新的な視点での総括的評価と、それに基づいた患者のサブグループ分けによるPrecision Medicineの推進を目指し本研究は計画された。血管障害:200例の強皮症患者が本研究に参加した。爪郭部毛細血管ビデオ顕微鏡を用い、その所見から血管障害の程度を正常、早期、活動期、晩期に分けることが可能であった。この血管障害の程度は強皮症で出現する臓器障害(肺高血圧、間質性肺炎、上部消化管障害、皮膚潰瘍など)を極めて鋭敏に反映し、血管障害による強皮症の病期が明確となった。さらに、特に晩期では臓器障害を多く伴うことから、血管障害の晩期への進行阻止が重要であることが示唆された。自己免疫:140例の強皮症患者がFACSを用いた末梢血のT細胞、B細胞、樹状細胞、単球、マクロファージを含んだ免疫細胞フェノタイプを網羅的に評価可能であった。強皮症患者ではeffector T 細胞およびactivated T細胞の上昇、Activated Th1およびActivated Th17の上昇、そしてEffector B細胞の増加を認めていた。さらに、この免疫フェノタイプから強皮症患者を分けることが可能となり、ほとんど免疫異常を認めない群、制御性T細胞増加が顕著な群、そしてT細胞B細胞ともに異常が明らかな群にわけられた。これらの症例においてT細胞B細胞ともに異常が明らかな群で特に血管障害が晩期へ進展している症例が多かった。一方、この免疫フェノタイプの各強皮症関連自己抗体は関係がなかった。
1: 当初の計画以上に進展している
血管障害と免疫フェノタイプの双方を評価したデータベースの構築が本研究の最も重要な柱である。現在の進捗状況は非常に良好であり、また現時点で得られている結果は、強皮症における新たな視点を有しており、今後の研究の発展も十分に期待がもてる。
現在の研究を継続するとともに、学会、論文などを用いて広く社会・国民に発信する。
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