研究実績の概要 |
本研究では、全身性エリテマトーデス(SLE)患者末梢血における自己反応性B細胞の質的異常を、B細胞のケモカイン受容体発現に着目して特定し、それらの誘導機構、病変組織への浸潤機序、自己抗体の産生などの病的意義を検討し、病原性B細胞に特異的な新規の治療標的分子を探索することを目的としている。2017年度の実験結果から、SLEではType I IFNを介したCXCR5減弱とType II IFNを介したCXCR3増強を伴うB細胞が病態形成に関与している可能性が考えられた。そこで、2018年度はその病原性を明らかにするため、同サブセットの遊走能、患者組織への浸潤を検討した。 遊走能の評価として、EZ-TAXIScanを用いた実験を行った。健常人、SLE患者、RA患者の末梢血20mlよりB細胞を分離し、CXCR3のリガンドであるCXCL10に対する遊走能を評価した。遊走細胞数、走化速度を指標としたが、各群で遊走能に有意差はみられなかった。次に、ループス腎炎患者の腎生検組織の免疫蛍光染色(CD19, CXCR3の二重染色)を行った。normal control(顕微鏡的血尿で腎生検を行った症例、n=1)、ループス腎炎Class IIでは、B細胞の浸潤を認めなかった一方で、ループス腎炎Class III or IV ではCXCR3+ B 細胞の浸潤を認めた。さらに、CXCR3+ and CXCR3- B cellsをカウントしたところ、CXCR3+ B細胞の割合は30.8±14.9%であった。以上より、CXCR3増強を伴うB細胞は炎症局所へ遊走し、炎症病態の形成に関与している可能性が考えられた。次年度は、さらに同サブセットの病原性を明らかにするため、エフェクター機能(抗体産生能、サイトカイン産生能)、抗原提示能を検討する。
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