今後の研究の推進方策 |
本研究のMLST法では、従来のCDCシステムと整合性を保つためTP0136, TP0548, 23S rRNA genesの3遺伝子を用いるのに加え、Treponema近縁種や公共データベースでの予備的な探索でGroEL,RecA, GlpK, AdK, GDH, PyrG, RplBの遺伝子を候補としている。B-1)での成果により再検証するが、T. pallidumの多様性が低く、ハウスキーピング遺伝子のみで識別能が不十分な場合、CDCシステムのRFLP解析に使用されているtpr/arp領域を使用する予定である。これらの遺伝子配列情報を利用したMLST解析により、日本由来株を十分な識別能で解析可能かを検証していく。共同研究者の異動があり、今後の実験をスムーズに行うため解析の基盤を移すことができないかを検討中である。梅毒は2期以降になると、主に血中を介し全身に広がっていく。体表からのスワブから検体を得にくくなるため、血液から効率的に遺伝子を検出する技術が必要となる。これまで早期梅毒患者の血液中からT. pallidum由来DNAが、20%程度検出されると報告されているが、コピー数の占有率の低さのため、従来のPCR法ではこれ以上の検出率の向上は望めない。近年、原理的には試料中のDNAが1コピーでも検出でき、絶対定量が可能となるデジタルPCR法がliquid biopsyとして注目されており、本法が梅毒患者の血液にも応用可能と推測されているが、これについては使える機器の目処が立っており、実験を実施していきたい。
|