研究課題
デング熱は熱帯・亜熱帯地域の途上国を中心に大きな問題となっている。日本でも2014年に国内流行が発生し、その対策は急務である。2015年には世界初のデングワクチン(4価弱毒生ワクチン)が認可された。しかし、生ワクチンはコストが高く、コールドチェーンも必要なため途上国での使用には向いていない。デング熱制圧にはより安価なワクチンが必要である。当教室ではその欠点を克服したデングDNAワクチンの開発を行ってきた。しかし、DNAワクチンはDNAの染色体への組込み、持続的抗原発現による自己免疫疾患発症の恐れがあり、安全面が不安視されている。そこで、その問題をも解決したRNAワクチンに着目した。RNAワクチンは病原体の遺伝子を含むmRNAである。従来RNAは不安定で精製・運搬時、あるいは体内ですぐ分解されるためワクチンには向いていないと考えられてきた。しかし、RNA安定化技術や投与方法の改良により注目されている。RNAワクチンは既存のワクチンの問題点を解決した有望なデングワクチンとなり得る。本研究ではデングRNAワクチン開発の基礎検討を試みた。平成29年度は基本となるRNAワクチンの構築を目指した。まず、Joint PCR法によりカプシド遺伝子を除く全ゲノムのデングウイルスDNAの増幅を試みた。しかし、10kbpを超えるDNAの増幅はjoint PCR法において困難であった。条件検討、研究協力者との相談により、大幅に時間はかかったものの、カプシドを除く全ゲノムDNAの増幅に成功した。それを鋳型としてRNA合成をしたところ、そのRNAには感染性がなく、細胞内でウイルス様粒子を産出することがin vitroの実験系で確認された。基本となるRNAワクチンの構築ができたことが示唆された。
3: やや遅れている
当初は平成29年度中にデング、日本脳炎、黄熱RNAワクチンを構築し、それらをキメラ化することで、よりRNA複製能の高いデングRNAワクチンを構築することを目標としていた。しかし、joint PCR法では長いDNAの増幅に向いておらず、基本となるRNAワクチンの開発に時間がかかってしまい、予定通りに進まなかった。
当初の計画通り、日本脳炎、黄熱RNAワクチンも構築し、キメラ化をすることでより有望なRNAワクチンの開発を行う。また、マウスを用いたin vivoでのワクチン評価までを行う。
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J Trop Med
巻: 2018 ページ: 6
doi.org/10.1155/2018/8127093
Jpn J Infect Dis
巻: 71 ページ: 58-61