C型肝炎は直接作用型抗ウイルス剤(Direct acting antivirals: DAA)の導入により、年齢に関係なく90%以上の症例で完全にウイルス排除(Sustained viral response: SVR)が可能となったが、治癒後の腎機能に関する報告は少ない。本研究では、慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)を有するC型肝炎ウイルス持続感染症例を対象に、DAA治療による腎関連因子の推移を、分子学的および免疫学的見地から明らかにするものである。 平成29年度では、まずCKD症例に対するソホスブビル(SOF)/レジパスビル(LDV)およびSOF/リバビリン(RBV)療法前後の腎病態を検証した。SOFは腎代謝薬剤であるため、CKDステージ3のみが治療対象となるが、SOF/LDV治療190例(HCV genotype 1)およびSOF+RBV治療77例(HCV genotype 2)を調査した結果、SVR率はそれぞれ97.4%、93.5%であり、非CKD症例と差は認められなかった。前者で1例のみ腎障害のため治療中止を余儀なくされたが、その他の症例で腎機能が悪化する症例はなかった。 HCV治療の新規薬剤である、エルバスビル(EBV)+グラゾプレビル(GZR)治療では腎機能に関わらず使用可能であるが、透析治療6例を含むCKDステージ3-5の29例において、全例でSVRを達成し、治療中に腎機能が悪化する症例は認めなかった。 各種SOF/LDV、SOF+RBVおよびEBV+GZR治療において、治療前と比して僅かに腎機能が改善(eGFR値が上昇)する傾向にあるが、統計学的に有意な差ではない。
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