研究課題/領域番号 |
17K16229
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
赤堀 ゆきこ 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 助教 (80782961)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / IL-17 / 感染症 |
研究実績の概要 |
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は莢膜を有するグラム陽性球菌で、鼻腔を通して肺に侵入し、肺炎を引き起こす。肺炎球菌感染による肺炎の病理解析では、肺胞マクロファージの集積が観察されることに加え好中球の浸潤が認められ、これと一致して炎症性サイトカインやケモカインの発現亢進がみられる。IL-17は、好中球を強力に動員する作用をもつ炎症性サイトカインで、様々な病原体に対する生体防御に重要な役割を担う。しかしながら、肺炎球菌感染肺炎におけるIL-17の役割は十分に理解されていない。そこで本研究では、IL-17による肺炎球菌肺炎の制御機構を明らかにすることを目的とした。 肺炎球菌肺炎の病態形成にIL-17産生細胞が関与するかを調べる目的で、野生型及びIL-17-eGFPレポーターマウスに肺炎球菌を気管内投与により感染させ、感染後の肺洗浄液(BALF)及び肺器官から細胞を採取し、フローサイトメトリー法にて解析した。その結果、IL-17産生細胞が感染初期において増加していることが観察された。次に、IL-17の生理的役割を調べる目的で、野生型及びIL-17A欠損マウスに肺炎球菌を気管内投与により感染させ、生存率を調べた。IL-17A欠損マウスは野生型マウスに比べ有意な生存率の低下を示した。肺炎球菌感染後の肺内生菌数を調べたところ、IL-17A欠損マウスでは増加していた。以上のことから、本研究では、IL-17Aが肺炎球菌の感染防御において重要な役割を担うことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺炎球菌感染におけるIL-17産生性細胞の関係性を調べるため、野生型及びIL-17-eGFPレポーターマウスに肺炎球菌を経気的感染させ、BALFおよび肺器官におけるIL-17産生細胞をモニターした。IL-17産生細胞数が感染後に増加し、IL-17産生自然免疫細胞の関与が示唆された。これまでIL-17産生自然リンパ球ILCの関与が示唆されていたが、マイナーポピュレーションであることが示唆された。次に、野生型及びIL-17A欠損マウスに肺炎球菌を気管内投与により感染させ、体重の測定及び生存率を観察した。IL-17A欠損マウスは野生型マウスに比べ有意な体重減少および生存率の低下が認められた。また、感染初期における肺内生菌数を調べたところ、IL-17A欠損マウスにおいて有意な生菌数の増加を認められた。これらの結果から、IL-17Aは肺炎球菌感染による肺炎において重要な役割を担うことが示唆された。 研究計画当初、文献情報としてILCの関与が示唆されていたため、IL-2Rγ/Rag2二重欠損マウスを用いてIL-17産生ILCの影響を調べる予定であったが、関与しないことが示唆されたため樹立を取りやめた。一方、IL-17/Rag2二重欠損マウスの樹立に取り組みIL-17の役割を詳細に解析する計画に変更した。IL-17/Rag2二重欠損マウスの樹立に向け準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は、肺炎球菌肺炎におけるIL-17産生責任細胞を同定することを目的としていた。当初の計画においては、IL-17産生細胞はILCを想定していた。しかしながらこれまで実験を進めた結果、ILCとは異なるIL-17産生細胞が見いだされた。このため実験計画を変更する。新たなIL-17産生細胞の関与を解析するための実験として、IL-17/Rag2二重欠損マウスを用いる実験を準備する。現在、二重欠損マウスを樹立に向け進行している。IL-17/Rag二重欠損マウス樹立後、IL-17/Rag二重欠損マウス及び野生型マウスに肺炎球菌を気管内投与により感染させ、生存率及び体重変化を観察する。
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